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愛情の表現 十

Side:朝登 目を、――目を疑うしかできなかった。信じられなかった。 少し言い争いをしていたかと思ったのに、急に相手の男が愁傷な顔をすると、涼さんは笑顔になった。 会話までは聞き取れなかったけれど、二人が駅の中のホテルに入っていくを呆然と見るしかできなかった。 なんで涼さんは俺に図書館に行くとか言ったんだろうか。 あの、スーツ姿の男は誰だろう。 親しい様子だった。キーケースだけを持って、急いで涼さんのために走ってきている様子にも見えた。 少しぎこちない様子も不自然だった。 俺は――あの人が好きだ。その意思表示にキスもした。 涼さんだって怒るものの、嫌がったり抵抗しなかったからついつい調子にのっていた。 少しずつだけど受け入れてもらえていると、彼の優しさに甘えていたかもしれない。 ホテルの入り口を見ながら、その場を動けなかった。 夕飯前には帰ってくるって言っていたけど、どうしたらいいのだろう。 噴水前のベンチに座って、自分がこんなにも涼さんに固執しているのに気づいて恥ずかしくなった。 ああ、俺は本当にあの人が好きなんだ。 それで今、俺はあのスーツの男に嫉妬している。それが嫌だった。

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