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劣等感 二

「……朝登、くん?」 「ベット行こう」 腕を掴まれて、そのまま俺の部屋の方に引きずられる。 怖くて声が出なかった。 部屋に入ると、呆然としている俺と反対に朝登くんが、上の服を脱ぐ。 「早く脱いで。二時間だっけ?」 「ねえ、朝登くん、酔ってる? ちょっと落ち着いて。俺、意味が分からない」 なんで酔った朝登くんが、そんなに怒ってるのか分からない。 けど、ズボンを脱いだ朝登くんが、ズボンを蹴飛ばして俺の方に近づいてくる。 無言で、俺が名前を呼んでも返事すらしない。 なんで? どうして、そんな顔をするの。無表情なのに、俺の腕を掴んだ瞬間、苦しそうに眉を歪ませた。 俺を簡単に肩に抱え込むと、ベットに乱暴に降ろす。 見上げた朝登君は、俺の知ってる彼じゃない。 酔っているだけだって分かってる。 「あ、朝登くん、怖いよ?」 返事はない。けど、俺の服を掴んでめくろうとしてくる。 彼が買ってくれたベットは、二人じゃ狭くて……彼が乗っかってきたら身動きができなかった。 「朝登、くん。キス、して。キス、して……」 本当にこの人は朝登くんだろうか。不安になってお願いすると、触れてきた唇は、俺が知っている優しいキスだった。 「朝登くん……」 少しだけホッとしていたら、彼は脱ぎ捨てたズボンの方へ戻っていく。 目が覚めてくれたのかとほっとして、布団を手繰り寄せる。 けれど、違った。 彼は財布を取り出すと、俺の方へ戻る。 そして再びのしかかってくると、財布から取り出した札束を、俺の顔の横に置いた。 「キスの奉仕分。エッチは、いくら?」 その冷たい言葉に、全身が冷えていくのが感じる。 どうして、そんな酷い言葉を平気で言うのだろうか。

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