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劣等感 三

Side:朝登 お金をおろしてきた。言葉では伝えられないし行動に移せなかったらいやだったので、浴びるほど酒を飲む。 いや、忘れたかったのかもしれない。 けど無事に、ベットに涼さんを押し倒せた。 あとは、金を追加すればいい。 財布から追加分のお金を出そうとして、涼さんの身体が震えているのに気づいた。 「俺……」 酒でハイになっていた頭が、一瞬で冷静になっていく。 「俺……馬鹿だから……気づかないうちに何か、朝登くんを怒らせたのかもしれないけど」 大粒の涙を目に溜めて、涼さんが震えながら俺を見上げている。 その姿に、一瞬で酒が抜けて、体温が下がっていく。 「俺、今から金で抱かれるの? これからも金で抱かれるの?」 「……りょ、さん」 瞬きもせずに、大きく目が見開かれ目尻からシーツへと涙が流れていく。 「朝登くんは、金さえ出せば俺を好きに抱いていいって思ってるの?」 「涼さん」 気づいたときにはもう遅かった。 抱きしめようと伸ばした手に、大きく体をびくりと震えさせ、俺の下、小さく自分を守るように丸くなる。 「……君にとって俺ってそんな価値だったんだね」 嗚咽交じりの泣き声が聞こえてくる。 漸く俺は、彼にとんでもないことをしてしまったんだと気づく。 彼を、怯えさせて怖がらせて、泣かせて、――それを見下ろしている。

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