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劣等感 四

部屋に響く泣き声に、死にたくなった。消えたくなった。 殺してほしい。 「俺、俺、貴方が好きです」 呆然と見下ろしながら、泣きそうになった。 傷つけておいて自分の気持ちを相手にぶつけるのは、なんて愚かな行為だろうか。 ずっと見下ろしていた涼さんが、枕を手に取ると俺に背を向けて顔を枕に埋めた。 「違うよ。君は俺が好きなわけじゃない」 「涼さん、俺」 「好き勝手できる相手だから、都合のいい相手だからだよ。俺は君に何も勝てない。学歴も、住む場所も、就職先も……力だって敵わない。君に無理強いされたら征服されるしかない存在なんだよ」 ふふ、と笑った後声を押し殺す様に泣き出した。 その細い背中に、俺はどれだけ酷い言葉を投げかけてしまったんだろうと後悔しかできない。 こんな風に傷つけたかったわけじゃない。 「俺……枕に顔を埋めとくから、セックスしたかったらしていいよ」 「――涼さん」 「お金をくれるんでしょ。お金で自由にしたいんでしょ。いいよ」 「……ごめんなさい」 顔も見えない状態で、涼さんを好きにしてもしょうがない。 俺がしたかったのは、こんなことじゃないのに。 「頭を冷やしてきます」 涼さんの上から離れて、よろよろと部屋から出ていく。 なんて馬鹿なことをしてしまったんだろう。 あんなに泣いてるのは俺のせいだ。あんなに泣かせて、あんなに傷つけて、彼のプライドを傷つけてしまった。 脱衣所の壁に頭をぶつけながら、ずるずると倒れ込む。 格好悪い。そして最低だ。

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