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口実探し 四
Side:朝登
今の状況を実況するとすれば、今すぐ涼さんに会って土下座して謝りたい。
この人は、すっごい威圧的だしインテリぶってるし、不機嫌なオーラを漂わせても周りが気を遣うような感じで全く好感はもてない。
けれど、俺が再会した日に涼さんがこの人を頼ろうとしていた人物だと把握できた。
涼さんはこの人に、仕送代を借りたらしい。
俺に言ってくれたら、気を使わないように給料分から渡したのに。
と言っても、多分言えなかっただろう。ベットやらソファやら、色々と買ったから遠慮して言えるわけない。そんな人なんだ。涼さんは。
「お前は、あんな五人も子供がいる家に涼を追い出して無責任だ。あいつが今まで散々家の犠牲になって、中卒で安い労働力で働いてきた状況を知っていて、よくもまあ追い出せるな」
「実家に仕送りまでは把握していなかったので」
「あいつが高卒認定試験受からなかったら、また工場の三交代で安い堂々扱いされて働くしかないんだ。友人ならもう少しあいつのことを」
「その言い方、やめてくれませんか?」
煙草を取り出そうとした、多田という涼さんの従兄に、低くて冷たい声でついそう言ってしまった。
「貴方が中卒は馬鹿だ、無駄だって言い方してるから、あの人、強いコンプレックスを持ったんじゃないですか? そんな状況なら高校に行けなかったのは涼さんのせいじゃないのに、涼さんが悪いみたいな言い方やめてください」
この人に会いたくなさそうだった涼さんを思い出して、つい余計なことを言ってしまう。
俺はこの人の何倍も最低なのに。
「それは悪かった。ただ、高卒認定試験だけはちゃんと受けさせてやりたい。お前が駄目なら俺の家に引き取る」
「俺が迎えに行きます」
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