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口実探し 五
俺があの人に許してもらえるか分からないけど。
「涼さんは、そんな大家族の長男として頑張っていたから接客が上手です。お客様の考えてることを読み取れるし、コミュニケーション能力も俺より全然あるし。柔らかくて優しい笑顔だし、それは彼自身の人柄なので学歴は関係ないです」
「……じゃあなぜ、あの家に追い返したんだ」
「……追い返したんではなく、喧嘩というか、その……俺が悪いのでそこはもう許してもらうしかないですが」
「涼さん?」
「やっべ、涼ちゃんどうしたの?」
――涼さん?
多田の向こう側を見ると、こちらから隠れるようにテーブルの下に屈んで携帯を弄ってる女子高生二人が電話で話していた。
「涼ちゃん?」
「駄目だ。どうしたんだろ、涼さん泣いてない?」
二人が焦って携帯に向って彼の名前を呼んでいる。
「ちょっと失礼」
「おい」
多田の制止を流して、二人に近づいていく。
「お前ら、何をしてんだ」
「やべ」
小さく漏らした声は絶対に聞き逃さない。二人は顔を見合わせて後ろへ逃げようとするので、携帯を奪った。
「何をしてるんだ」
「……あの、携帯さ」
「なんだ?」
「まだ涼ちゃんと通話中だから、喧嘩してんなら、話せば?」
「は?」
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