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口実探し 六
なぜ涼さんと電話?
というか、連絡先を交換している抜け目のなさに驚いた。
いつの間に?
休憩時間もほぼカウンターにいた涼さんといつの間にそんな親密になっているんだ。
『っく……』
「りょ、涼さん?」
携帯の向こう、鼻をすする音がした。
「も、もしもし?」
『……』
「あの、もしもし?」
『もしもし』
「あ、もしもし!」
「もしもしうるさい。早く本題に入れ!」
口下手の俺に、あの多田野郎、偉そうに。
「……あの、迎えに行きます」
『……』
「嫌なら逃げるか、家の柱に括り付けていてください。俺は、絶対に迎えに行きます!」
涼さんからの返事はない。
女子高生二人と心なしか多田も不安そうだ。
「謝罪が足りないんじゃね? 土下座動画撮る?」
「怒らなさそうな涼さんが怒って実家に帰るって、まじ何したの?」
「涼、俺の家に来い。こいつじゃいまいち不安だ」
「俺は! 二度と涼さんを傷つけません! だから信じてください」
周りがそれでも色々言うので、不安になって受話器に耳を澄ますと、とっくに切れてしまった後だった。
「あちゃー……」
「誠意が足りなかったね」
「ま、まあ、涼は意外と頑固だから」
多田にまで慰められたら、流石に屈辱だ。
けれど、電話は切られても、俺は行く。
絶対に行く。涼さんがそれでも迷惑そうな顔をしたら諦めるけど、それを見るまでは絶対に諦めない。
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