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口実探し 七

Side:涼 「う……ううっ」 携帯を握ったまま、冷蔵庫の前で倒れ込む。 一歩も動けなかった。 床に落ちていく自分の涙に、笑いが零れる。 「ただいまーって、兄貴!?」 「ちょ、お兄ちゃん!?」 保育園へのお迎えをしてきた妹と、受験生の弟が揃って帰宅してきて、俺の姿を見て飛び上がっていた。 「お腹痛いのか? 立てるか?」 「……お兄ちゃん?」 床にごろんと倒れてあおむけになった俺に、二人は首を傾げていた。 多分俺は、顔がだらしなく笑っていたからだと思う。 どうしよう……幸せすぎて顔が笑ってしまうんだ。 「ごめん。嬉しいことがあって、嬉しすぎて泣いちゃった」 「兄貴、泣くと目がパンパンになるんだろ。ほどほどにしとけよ」 「私がご飯作るから、あっちで寝てなよ」 二人が心配してくれるので、お言葉に甘えて立ち上がる。 立ち上がる拍子に『ふふふ』と笑いが零れてしまって、二人に全力で引かれてしまった。 でも、嬉しい。 まさか厚真兄ちゃんが俺を心配して朝登くんを訪ねるとは思わなかったし、朝登くんが――。 朝登くんがあんなに『俺』自身を認めてくれていると思わなかった。 自分としては、未熟で人間として一人前とは言いにくいし、ドジだし馬鹿だと思っていたけど、厚真兄ちゃんとは正反対で俺のことを分かってくれている。 「ふ、ふふふふふふふ」 「また笑ってる……」 「おい、千恵、体温計探して来い」 「ふ、ふふふふ。大丈夫だってば。ふふっやば、顔がにやけるー」 抓っても、引っ張っても、定位置に戻すと口がにんまり開いてしまう。 ああ、俺って本当、単純だ。昨日まで、ぐるぐると色んな感情でおちこんでいたくせに。

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