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口実探し 十

Side:朝登 「こ、ここか」 意外とそんなに涼さんの前の職場から離れていなかった。 ここなら自宅から通えたんじゃないかな。 自宅から通える場所に、中卒だから就職するしかなかったのかな。 涼さんの家は一階建ての長屋みたいな一軒家。茶色い木製の壁に、ところどころ塗装の剥がれた青い屋根。 横に長い家の庭には、風に吹かれて揺れている大量の衣類。 自転車も補助輪付きも合わせて五台。 多田さんが言うには、涼さんがずっと家に仕送してきたおかげで、涼さんの弟と妹さんは高校を卒業しているらしい。 小学生の双子の弟たちからは、涼さんと血がつながっていないけど、兄弟の関係は涼さんがまとめてくれていたから良好らしい。 多田さんはそこまで知っていて、よくもまあ涼さんを傷つけるような言葉を吐くよね。 俺の方が酷いことはしたかもだけど。 それよりもここのご両親の方が呆れてしまうかもしれない。 「あーもう、聖羅(せいら)の準備まだなの!? 私が遅刻しちゃうじゃない。親なら自分が産んだ子供ぐらい最低限面倒見なさいよ」 「千恵、俺が連れていくから早く行きなよ。いつもありがとう」 「……お兄ちゃん、ごめんね、行ってくる!」 俺の前を、セーター服の女子高生が走り去る。 パッと見、ポニーテールに結んだ髪もスカートの丈も標準ぐらいで、清楚で可愛らしい子だった。 うちにくる女子高生二人に見習わせたいぐらいだ。 「兄貴も、家事は無理しなくていいからさ、勉強しなよ」

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