49 / 152
口実探し 十四
「というか、なんで俺が下なんだよ! 俺の方が力が弱いし低学歴だから?」
「ちが、――違います。その、……涼さんの方が懐が大きいし優しいし、包み込んでくれるからかなって」
「……おだてても、朝登くんはこわいから嫌だよ」
べーっと舌を出すと、困ったように髪をくしゃくしゃ掻きだした。
「俺はもうお酒は飲みません!」
「その方がいいね」
「言葉でうまく伝わらないって逃げ道を探すのも止めます。ちゃんと言葉で涼さんが好きだと伝えます!」
「……う」
それはどう反応していいか分からない。嫌だって言うか、嫌じゃないし。
「それと、貴方が高卒認定試験受かるまでは口説きません!」
「……え」
信じられない。だって、すれ違い様にキスしてくるような男だぞ、朝登という人間は。
「そんな信用できないって顔止めてください。高卒認定試験受かって、やりたいことがあるって言うなら、店も辞めて構いません。……居てほしいけど我慢します」
人と言うのは、数日でこんなに変わるものなのか。
いや、DVする人はハネムーン期があるって聞いた。
朝登くんだってお酒飲んだら……また、あんな感じになるんじゃないの。
いくら厚真兄ちゃんの前であんな風に言ってくれたって、俺は……。
「今は勉強に集中してください。でもランチとディナーはよろしくお願いします!」
「……正直でよろしい」
なんでこんな俺にここまでしてくれるんだ。
この前押し倒したことへの贖罪ってやつ?
『好き』だけでここまでできるの?
でも……。
ハンドルを握っている彼の手をそっと握る。
「……涼さん」
「迎えに来てくれてありがとう」
居場所があるって思えるのは嬉しい。
俺も君の気持ちにちゃんと向き合うよ。
「……地の果てでも迎えに行きます」
「あはは、超こわーい」
「その喋り方、あの女子高生たちみたいです」
そうだった。帰ったらあの二人にもお礼を言わなくちゃ。
ともだちにシェアしよう!