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スキンシップ 七

「ごめ、そんなつもりじゃなくて……」 嬉しかったんだ。 あんな風に迎えに来てもらえて、俺のことを試験までは口説かないとか、勉強に集中してとか。 俺のことを心配してくれる朝登くんの気持ちが嬉しくて、一方的にはしゃいで懐いてしまった。 ……俺の嬉しいって気持ちと、朝登くんの起っちゃう気持ちは違うのに。 「大人しく勉強しときます」 「ん。試験明日でしょ。今言えることは、頑張ってください、だけです」 「頑張るよ。それに、四択だから迷ったら勘だしね」 「確かに勘良さそうですね」  N 空気を換えようとしてくれた朝登くんに乗っかってわざとはしゃいで見せた。 まずは試験に合格して、それからだ。 何かが変わるとしたら。 俺も、朝登くんとは育った環境が違うから、距離の取り方考えないとなあ。 「朝登くん、夜は何が食べたい?」 「今日は俺が作ります。何がいいですか?」 お前は俺の妻か。と言いかけてやめた。 今何を言っても意味深に聴こえてしまうかもしれない。 「えーっとじゃあ簡単なやつ。オムライスとかどうかな」 「りょーかい」 何故かクスッと笑われたけど、それは我慢した。

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