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第一歩。 一

「高卒認定試験って問題難しいみたいだね」 「あ、ここ! ここでシミュレーションできるみたい。うわあ、一門目からやっばい」 学校が終わってから一目散にやってきた二人が、先ほどから胸がキリキリするような内容の話ばかりしている。 高卒認定試験の平均合格年齢は20歳ぐらいだとか、勉強する範囲が広すぎるから難しいとか。 20問の過去問シミュレーションで二人が合格点をとれておらず悲鳴が聞こえる。 いや、あの人は勉強する環境がなかっただけで頭は良い。 そこは心配していない。問題は合格した後だ。 ……涼さんが俺の気持ちにこたえられないのならば、一緒に居たら襲ってしまう可能性も全くないわけではないし。 就職後どこかに部屋を借りて、と俺から離れてくれた方がいい。 離れたくないけれど、俺に対して好意がないなら離れた方がいいのかもしれない。 「店長、顔こわいけど、だいじょうぶー?」 「うわ殺人犯みたい」 「……お前らはとっとと帰れ」 ケーキと無料のジュースだけで何時間居座る気だ。 この数日は、カウンターで勉強している涼さんに参考書を貸したり隣で一緒に勉強していたから大目に見ていたが、今日からはそんな風に大目には見ない。 時計を見れば、そろそろケーキを狙って学生が現われる時間帯だ。 夜もそんなに人が来ることもないだろうから、大変ではない。 だから涼さんは気にせず――。 「あの……戻りました」 入口から現れた涼さんが、おずおずと俺の方を見た。

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