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第一歩。 三
てっきり窓際に飾られると思ったのか店内をきょろきょろ探すが、そんなところにはない。暗殺者みたいな猫をそのまま飾ったら、招くどころか逃げていくだろ。
「レジのとこ。飴の中」
「あー、飴あげるようにしたの? 本当だ。飴のプールの中に溺れてる」
金魚鉢を買ってきて、適当に飴を詰め込んだ。その中に、暗殺猫が飴の海に呑み込まれている。これぐらいなら、少しは可愛く見えるのではないか。
逆にここまでしないと、顔の怖い俺は可愛く見えないわけだ。
そう思うと、少しだけこの猫が好きになってきた気がした。
「……朝登くんに似て、良い場所を選ぶねえ」
「なんすか、それ」
「ふふ」
上機嫌な涼さんは、満足そうに笑っただけで大きな口でケーキを食べだす。
意味深な言葉の裏は案外なさそうだ。
「合格通知っていつ来るの?」
「一か月後かな。こんなに浮かれてて落ちてたら恥ずかしいよね」
「ぜーんぜん。テストぐらいで赤点取って恥ずかしいわけないじゃん」
「でも合格だったらなんかイベントしてよー。私、ケーキバイキングとかしたい」
「わ、それ俺もしたい」
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