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第一歩。 六

Side:涼 「……ふう」 問題の自己採点で、合格ラインを越えているのを見た瞬間、ホッとしてしまった。 恥ずかしながら二年と半年かかって、漸くこのコンプレックスから解放されると思ったら、力が抜けちゃって。 体温計が鳴ったので取り出すと、37.8度。 どうみてもホッとしたための気のゆるみだ。風邪とかではない。 でも明日はちゃんとお店を手伝いたいし、回復したいから薬はありがたかった。 薬を飲んでも、微熱のせいか頭がふわふわしていた。 鞄の中に、朝登くんが作ってくれたお弁当の空箱がある。 早くシンクに入れなきゃいけない。 夜ご飯を食べていなかったら心配かけちゃうかもだから、さっさと食べてしまいたい。 あ、厚真兄ちゃんにも合格ラインだったって連絡してない。 半休の日にいくホテルのケーキバイキングのホームページも見たい。 そういえば美穂ちゃんと花ちゃんは製菓の専門学校に行くって言ってたな。 あの二人ならおしゃれで可愛いケーキを作ってくれそうだし、いつか朝登くんのお店に入荷しちゃうかもしれない。 『そんなにケーキ好きなら、一緒に通いましょうよ』 花ちゃんたちはそう言ってくれたけど、専門学校に行きながら学費と生活費を稼ぐのは難しいだろう。 せいぜい、ケーキ屋で正社員として働けたら確かに、テンションは上がると思うけど。 色々とまとまらない考えが、熱のせいで次から次へと出てくる。 することがいっぱいあるのに、ソファに寝転んでしまったらなかなか起き上がれなかった。 「何してんすか。涼さん」

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