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第一歩。 八
Side:朝登
『朝登くん……熱が下がったから、一晩のお礼に来ましたよー』
「え、涼さん?」
赤い着物を着ている涼さんが、はらりと肩から着物を落とすと、俺の上に跨った。
そして、裸を見て興奮してしまっている俺の股間に手を伸ばす。
『可愛い。もう固くなってる』
「りょ、涼さん……」
『俺に任せて。わ、……口に入るかな』
大きく口を開けて、赤く濡れた舌が俺の股間に伸ばされる。
光った唾液が、糸を垂らして先端に落ちると、息を飲んだ。
妖艶な涼さんが俺に跨って、俺に――。
ゴトンっと大きな音がして目が覚めた。
目が――……目が覚めた。
恐る恐る布団を捲り、ズボンのゴムを引っ張って下着を見る。
あまりにも無残な下着の様子に、死にたくなった。
中学生かよ。こんな年になって、夢精してんじゃねえよ。
「……死にたい」
ソファの上から絨毯の上に落ちて、額を打ち付ける。
あんな妖艶な涼さん、夢の中でしか一生見れないような気がした。
賢者タイムの今、強く思う。
「朝登くーん。ベットから落ちちゃったんだけど、朝登くんも落ちたのー?」
リビングにやってきそうな涼さんの声に、俺は柱に隠れる。
そしてリビングに入って『あれ?』と首を傾げた涼さんの後ろを全力疾走して脱衣所に向かった。
「あ、なんで逃げるんだよ!」
「涼さんは、ソファで熱でも測っていてください!」
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