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第一歩。 九
「なんでそんな意地悪言うんだよ!」
「じゃあ一緒にお風呂に入りますか! 俺は良いですよ! welcomeですよ!」
「逆切れすんなよ……」
急に涼さんの元気がなくなった。
急いで下着を脱いで、新しい下着を穿いてから何事もなかったようにリビングへ戻った。
「熱はどうだったんだよ」
「平熱に戻ってたよ。それより、ほら」
前髪を捲ると、真っ赤になった額が現われた。
「頭から落ちちゃった。ださいだろ」
「……奇遇です。俺もさっきソファから落ちちゃいました」
「朝登くんには、ソファは小さいからね。どれどれ」
ソファの隣に座ると、涼さんがにっこり笑った。
「熱が下がったお礼に――」
「え!?」
もしや正夢。一瞬、そんな馬鹿げた考えが脳裏に浮かんだ。
起きたばかりの冴えない頭のせいだった。
涼さんが俺の前髪を上げると、赤くなった自分の額をこつんと当てた。
「痛いの痛いの、俺に飛んでいけーってね」
「は!?」
「これ、俺の兄弟に全員してやったなあー」
「はあ!?」
「なんで驚いてるんだよ。あ、エッチなこと考えてたの? さいてー」
涼さんの話し方が、本当にあの女子高生たちみたいになってきた。
が、あまりにもひどい。あまりにも夢とかけ離れた行動に、自分が如何に汚れているか気づかされる。可愛いけど、この現実は酷い。
「……ふ。涼さんのエッチなことってせいぜいキスどまりでしょ。……ふふ」
「二回も笑うなよ! 自分だって寝ぼけて額打ってるくせに」
「まあ、色気のない行動で笑ってしまっただけです」
「どこいくんだよ」
「……涼さんを心配してお風呂に入ってなかったので、シャワーを」
期待してしまった分、空しい。俺は弟くんたちと同レベルってか。
「あ、一緒に入ります?」
「入るわけないじゃん!」
夢の中の妖艶な涼さんは今何処。
そんな悲しい思考の中、風呂に向かう。
ああ、
下着洗わなきゃ。
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