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第一歩。 十一
「……これ」
四枚、別々の不動産屋のチラシだ。わざわざ見に行ったってことは、俺の部屋を探しに行ったってことかな。
もしかして、俺があまりはっきりした態度をとらないから、一緒に暮らすのが辛くなったとか?
さっきだって全力で脱衣所まで逃げていたもんな。
……俺、やっぱ違う場所で就職して、朝登くんと離れた方がいいのかな。
昨日は熱に気づいてくれて、ベットまで運んでもらえてうれしかったけど、もしかしてここに居たら朝登くんにものすごく負担になってしまう?
「涼さん、洗濯機回すけど、洗うものある?」
「え、あ、えっと、あ、この服!」
チラシをテーブルに戻すと、着替えていなかった服を急いで脱ぐ。
「……っ」
「この上の服もおねがーい」
「分かりました」
「俺、あとで干しておくよ。今日のランチの仕込みするでしょ?」
エプロンを手に取りながら、そう聞くと、ものすごく睨まれた。
「な、なに?」
「上の服着てからエプロン着てください」
「えー、だって俺もシャワー浴びてないし」
朝登くんのエプロンは大きいから丁度隠れて、良い感じなんだ。
「油とか跳ねるでしょ。料理人の前で中途半端な格好はしない!」
「……ごめん。A型の朝登くん」
「細かいって思いましたね、短絡細胞のO型の涼さん」
「なんで俺がO型って分かったの?」
「見てれば分かります」
本当に不機嫌マックスになった彼は、言い捨てるとお風呂場に戻って行ってしまった。
怒らせてしまった……?
朝から油なんて使わないけど、確かに衛生的にはいい加減な服装だったかもしれない。
……俺、やっぱり彼を怒らせてしまうことばかりするから……はやめに就職先を見つけたら出て行った方がいいのかもしれない。
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