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第一歩。 十八
「え、あ、エンジンですね。すぐにかけます」
違うのに慌てる朝登くんは、すぐにロータリーから飛び出した。
厚真兄ちゃんも、右手を少し上げて笑っているように見えた。
「厚真兄ちゃんの子ども、可愛かったよ。奥さんがクォーターなんだって。赤ちゃんも目が青くてね」
「……そうですか」
「うん、でも」
窓の景色を見ながら、ため息が出た。厚真兄ちゃんには悪いけど、確かに赤ちゃんは可愛いけど、どうしても俺は早く欲しいって気持ちが湧かなかった。
「こんなこと言ったら、朝登くんに軽蔑されちゃうだろうけど、俺……別に赤ちゃん欲しくないなって思ってて」
「涼さん?」
「物心ついた時から、ずっと赤ちゃんの世話してたから、大人になったらもう、いいかなって、可愛いのに、欲しいかって言われたら、俺、躊躇しちゃう。できたら恋人と、二人の時間が欲しいって」
こんなこと、厚真兄ちゃんに言ったら説教なのは分かってる。けど、兄ちゃんが結婚は良いぞ、とか赤ちゃんは可愛いぞとか言うたびに、心にダメージを受けた。
すると、黙って聞いていた朝登くんが急にコンビニに車を止めて、俺の額に手を置いた。
「……やっぱり熱がある。厚真さん、風邪だったんですか?」
「兄ちゃんは、寝不足。二徹って言ってたから。あの、奥さんがインフルで……」
「予防接種しました?」
俺が首を振ると、無言で朝登くんがコンビニに行く。
そしてポカリやマスクを買って俺に差し出してきた。
「明日まで熱が下がらなかったら、病院行きましょう」
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