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第一歩。 十九

「ご、ごめっ」 「俺は予防接種してるので気にしないでいいです。弱ってるときって、つい言いたくないことも言ってしまうかもしれないです。さっきの言葉は、聞かなかった方が良かったですか?」 「わかんない。……そんなにダメな発言だった? 軽蔑する?」  子供が欲しくないって、俺、人間的に何か欠落してるのかな。  厚真兄ちゃんも奥さんも、赤ちゃんも、嫌な部分はなかった。 でも、家庭を持てって言われたら、すっごく背中がぞわぞわして寒気が全身を襲うような、急に息が苦しくなるような気がした。 「苦手なものって、俺もありますし。それに多分、涼さんの今までの人生の中で、赤ちゃんがいつも人生の岐路を邪魔してたんじゃないかなって上手く言えないけど。だから、軽蔑しない。逆に、人間らしいっていうか。ちゃんと涼さんにも負の感情があるんだなって、失礼ですが」 淡々と表情を変えないで言う朝登くんが、今はなんだかホッとする。 飾らない言葉だからだろうか。 「……朝登くんと離れてたから、ちょっと心が弱くなってたかも。今の発言はもう絶対に言わないことにするけど、ありがとう」 本当に、身体が弱っていたのか、シートを少し倒して横になると体が重たく感じた。 心も弱ってしまったのか、この前から俺は情けない部分ばかり。 家に着くまでの間、聞いたこともない洋楽の曲をかけてくれたので、子守歌みたいにふわふわと眠たくなって眠ることができた。 きっと心が、弱っていたんだ。 朝登くんの家に帰ると、俺のために用意してあったご飯が、サランラップをかけてテーブルの上においてあった。 オムライスとサラダと、わかめのスープ。 それだけで、泣けてきたんだ。 涙が溢れてきたんだよ。 どうしても、泣きたくて泣きたくて、涙が止まらなかった。 「どうしたの? 抱き上げていい?」

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