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第一歩。 二十

朝登くんに顔を覗かれて、俺は泣きながら頷いた。 優しく抱きかかえてくれた朝登くんに、俺は自分からは抱き着けなくて、彼の背中を手を丸くしてしがみつくだけにした。 ここがいい。 この家に居たい。 朝登くんが家族だったら嬉しい。 熱でぼやける思考回路の中、俺のために作ってあったオムライスが嬉しくて涙が出た。 レストラン、俺が急に休んだから大変だったのに。 朝の仕込みだって、急なお弁当で大変だったろうに。 それなのに、俺のためにオムライスを作ってくれたんだ。 迎えに来てくれたんだ。それは、彼の言葉にもしない愛情の表現。 厚真兄ちゃんが、奥さんや赤ちゃんに癒しを貰っていたり家族に癒されてるのと同じで、俺は――。 俺はきっと朝登くんのそばがいい。 朝登くんのオムライスに、幸せを感じた。 「うわ、熱が高い。絶対にインフルですね。冷却シート持ってきます」 「あ、朝登くん、俺」 「ん?」 「あのオムライス、朝食べたいから残しといて」 泣きながら、情けないほど声がかすれたけど、そう言った。 それだけしか言えなかった。 どんな言葉が正解なのか分からなくて、ただそう言った。

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