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伝える方法が分からない。
Side:朝登
リンゴのように赤くなった涼さんが、朝、苦しそうに飲み込みながらオムライスを完食したのは、ついさっきのこと。
病院につれていくと、インフルの疑いがあるからと個室に移動されたが、反応は陰性だった。
涼さんは長男でわがままを言ったことがないし、我慢をしてきたから、我慢が限界を超えたら熱を出すんじゃないだろうか。
昨日は憶測だけど、触れたくないデリケートな思考に触れてしまったんじゃないかな。
八人兄弟の長男で、高校進学をあきらめて、学歴コンプレックスがあるのに、子どもが好きだよ、可愛いよって言える人よりも、――俺はちゃんと自分の暗い部分と見つめ合っている涼さんの方が好きだ。
そう伝えたいけど、好きだって意味がプレッシャーにならないかとブレーキを踏んでしまう。
「ごめんね、二日も休んじゃって。熱が下がったら、ディナーからは出るから」
「いいんです。寝ててください。お昼にまた、熱を測りに来ますから、安静にしてて」
「……うん。ありがとう」
あ、そうだ。忘れるところだった。
時間を見つけては集めていた、アパートのチラシの束を渡す。
一瞬、涼さんの顔が強張った。熱が高い人に見せるものではなかったかもしれない。
「弟君がもし、進学するんだったらと、うちの近くのマンションとか調べてみました。食事はうちですればいいし、涼さんも見て、良いのがあったら渡してあげてください」
「……弟のため?」
「はい。家を出たそうだったので。近くなら安心じゃないですか?」
「……うん。そ、だね」
何か憑き物が落ちたような表情で頷くと、へらりと笑った。
どうしたんだろう。ホッとしたように笑う涼さんは可愛い。
「それ、熱がもう少し下がってから見てください。俺、仕事に戻るんで」
「うん」
「……?」
頷いただけなのに、涼さんの表情が柔らかくて、なぜか目が離せなかった。
熱があるからだろうか、目元が潤んで、不覚にもドキドキしてしまったが病人を口説くわけもなし。
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