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伝える方法が分からない。六
「あああー、涼さん、ブラウスのボタンを一個だけ外してかぶって着替えましたね!」
「だってボタン面倒じゃん。洋服みたいにガバっと着て、着替えを短縮できるから」
「……あーもー」
こんなところは豪快で大雑把なんだよなあ。
見た目は、繊細ですっごいしっかりしてみえるのに。
「動かないでくださいよ」
「はーい」
ふわふわの柔らかい髪に触れる。ボタンに巻き付いた髪をほどくだけなのに、背中やお腹を見ると、いけない気分になってくる。
あー……ちらちらと見える乳首も可愛い。
俺、本当にこの人が好きで、……同性でもいいから抱きたいと思ってる。
同性と付き合った経験も、好きになったこともないのに、どうしてもこの人が好きなんだ。
「とれた?」
「もうちょっとです」
それは、小さな嘘。
とっくに解けているのに、指に絡めてほどけた髪を触る。
どうしよう。
俺は意識されていなくても、この人が好きだ。
抱きたいと迫ったら嫌われてしまうかもしれないし、逃げられるかもしれない。
でも……このまま一緒に居るならば関係をはっきりしたい。
けど押し倒して怖がらせた手前、長期戦がいいのかな。
何年でも待てる自信はあるけど、この人は綺麗だからきっと寄ってくる女性は多いだろうし。
「ねー、とれた?」
「……取れました。今度から横着しないでください」
「――A型」
はあ、と深いため息が出た。
本当にこの人は、人の気も知らないで。
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