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伝える方法が分からない。十

「駄目だよ。未成年だし、お小遣いとかからなら申し訳ないからちゃんと払うよ」 「だって涼ちゃんが来てから店長がサービスしてくれるから全然前より安く通えてるからお礼だってば」 「涼くん、しつこーい。店長、涼さんがすっごいやつ持ってるよ」 「わ、こら!」 二人はレジに食べ多分のお金をきっちり払うとそそくさと逃げていく。 ……なんて性格の良い子たちなんだろう。 相談に乗ってもらったお礼も結局言えないままだ。 俺のために見たくもないだろうサイトを検索してアドバイスしてくれたのに俺、しつこかったって言われた。 「なんで落ち込んでるんですか? 何か言われたの?」 心配そうに、ひょいっと朝登くんが顔を出す。 厨房に入って料理している朝登くん、本当に格好いいんだよね。 と、落ち込んでいたのに一気にテンションが上がった。 「いや、大丈夫だよ。今日のスープと前菜は何かな」 「今日は枝豆のクリームスープです。団体客が帰ったら、一緒に食べましょ。俺としては、涼さんの千切っただけの豪快なキャベツの入ったコンソメスープが好きですけどね」 「な、ちゃんと卵とウインナーも入れてるじゃんか!」 「まあ、そうですね」 う。無表情の顔のくせに、口の端をあげて少し微笑む。 その顔が、とても格好いい。 そうなんだよね。朝登くんは俺と違って、顔の造詣が完璧なんだ。 「あんまじろじろ見ないでください」 「いやあ、格好いいなって思って。俺、鼻低いけど、朝登くん高いし目もキリっとしてるし」 「でもキスの時、鼻がぶつからないように斜めにしないといけな――」 最後まで言う前に、急に下を向いて手で口を隠した。 けど、ばっちり聞こえました。どうせ俺はキスしても鼻は当たらないよ。 経験豊富な彼とは違う。 「あれ、俺、朝登くんとキスしたとき、鼻当たったことないね。ちゃんと斜めから攻めてきてたの? 俺が低いからあたらかなったの?」 「勘弁してください……」 朝登くんの耳が少し赤くなった気がする。 顔を覗き込もうとしたら、背を向けられた。 押し倒されてお金を投げつけられた日、キスだけは優しかったからホッとしてたけど、どうだったかな。記憶が曖昧だ。 「なんですか。キスしてほしいんですか」

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