92 / 152

溺愛×試練 一

Side:朝登 まただ。 夜中にトイレの流す音で起きる。 普段はそんな音、気にもしないで熟睡してるんだけど、何故だろう。 携帯を触って時間を確認すると、一時を過ぎていた。 こんな時間に、涼さんが数十分置きにトイレに行くことが増えた。 一度、三階から『お腹が痛いんですか』と聞いたら逆立った猫のように飛び上がり、悲鳴を上げて部屋に走って行った。 今もそうだ。パタンとトイレのドアが開いて涼さんが『……ふう』と悩まし気なため息を吐いている。 何か悩みがあるのか、それとも考えたくないけど、いや考えてしまうけど、涼さんだって健全な男子であるから、夜中にムラムラして抜いてるのかなっとか。 詮索とか勝手な推測は最低だと分かってるんだけど、トイレの間隔につい変な脳内妄想がもわんもわんと起きてしまう。 やはり、他人と一緒に住むのはストレスなのかな。 俺は他人ではなく恋人になりたいが、どのタイミングでその話をすればいいのか分からない。 朝から夜まで仕事して、夜は涼さんが料理している間に風呂掃除とか洗濯物畳んで、ご飯食べて、ソファで寝落ちする涼さんを部屋に押し込んで……。 色気が出るシチュエーションにもっていけない。 デートだ。この辺のことを教えたいし、デートするしかない。

ともだちにシェアしよう!