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溺愛×試練 一
Side:朝登
まただ。
夜中にトイレの流す音で起きる。
普段はそんな音、気にもしないで熟睡してるんだけど、何故だろう。
携帯を触って時間を確認すると、一時を過ぎていた。
こんな時間に、涼さんが数十分置きにトイレに行くことが増えた。
一度、三階から『お腹が痛いんですか』と聞いたら逆立った猫のように飛び上がり、悲鳴を上げて部屋に走って行った。
今もそうだ。パタンとトイレのドアが開いて涼さんが『……ふう』と悩まし気なため息を吐いている。
何か悩みがあるのか、それとも考えたくないけど、いや考えてしまうけど、涼さんだって健全な男子であるから、夜中にムラムラして抜いてるのかなっとか。
詮索とか勝手な推測は最低だと分かってるんだけど、トイレの間隔につい変な脳内妄想がもわんもわんと起きてしまう。
やはり、他人と一緒に住むのはストレスなのかな。
俺は他人ではなく恋人になりたいが、どのタイミングでその話をすればいいのか分からない。
朝から夜まで仕事して、夜は涼さんが料理している間に風呂掃除とか洗濯物畳んで、ご飯食べて、ソファで寝落ちする涼さんを部屋に押し込んで……。
色気が出るシチュエーションにもっていけない。
デートだ。この辺のことを教えたいし、デートするしかない。
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