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溺愛×試練 二
「明日の半休?」
「そうです。良かったら、駅までブラブラしませんか。ケーキバイキングも行けないままだし」
「ケーキバイキング……」
オムレツを作っていた涼さんは、ハッとしてフライパンの中を必死で擦る。
丸めるのを失敗したオムレツを、端で形を整えて誤魔化そうとしているのが伺えた。
「もしかしてお腹の調子がよくない?」
俺が聞くと、『うひ』と変な声を上げて飛びだがる。
いくら俺でも、流石に涼さんの異変に気付いてしまうと思う。
「大丈夫だけど、ケーキバイキングはもう少しあとでいいかなって。あと明日は一人でぶらりと行きたいとこがあって」
「……そっか。そうですよね」
始終俺と一緒に働いて、俺と一緒の部屋で食事してれば見たくない日もあるか。
涼さんのストレス軽減が優先だ。
「じゃあ次の休日は、俺に空けといてくれますか」
破れたオムレツに、ケチャップをかけて誤魔化していた涼さんが、俺を見て何度も頷いた。
「……俺も、そう思っていた」
少し俯き加減で頬を染めて言われて、戸惑う。
そんな可愛い顔は、反則だ。
「行きたい場所あったの?」
「えっと……いや、違うけど、それぐらいには、俺の準備がいいかなって」
「準備?」
「こっちの話! ほら、チーズたっぷりのオムレツだよ!」
話したがらないのを無理に聞くのもいけないだろうと、可愛いオムレツを食べながら我慢するしかなかった。
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