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溺愛×試練 五
「もしかして、なんですか」
「いや、聞きたくない。これは一番考えたくない」
「ああ、俺と涼さんが恋人だったら――とか考えてます?」
にやりと笑うと、分かりやすいぐらい顔色が悪くなった。
綺麗な奥さんがいる人には、俺の気持ちなんてわかりはしないってことだな。
「違いますよ。残念ながら、俺の片思いです」
「そうか。……一生片思いしていろ。一生」
「涼さーん、従兄の多田さんが大人げなく俺をいじめてきます。年下なのに」
「お前、涼より年下なのか」
確かに涼さんは童顔だけど、俺のことを何歳だと思っている。
ガラスのように繊細な心の持ち主だぞ。
「もー。厚真兄ちゃん、辛辣なんだよ」
「お前も、聞きもせずにそいつの肩を持つな!」
「朝登くんはね、口下手なので喧嘩なんてしませーん」
流石涼さんだ。一方的に俺の話を聞いてくれた。
「朝登くん、手、綺麗?」
「いえ、野菜切ってます」
「じゃあ、あーん」
頂いたクッキーの缶から、一番大きなクッキーを取り出して俺の口に噛ませた。
それを半分だけ噛むと、残りの半分を涼さんが食べる。
「このメーカーのクッキー、バターがたっぷりで美味しいんだよね。どう?」
「美味しいです」
「だよね。だよね。もう一つ、どれがいい?」
「一番端の、絞ったやつ」
俺がそう言うと、嬉しそうに口の中に放り込んでくれた。
ああ、多田がいなければ抱き着いてしまいそうなほど、天使だ。
「俺もクッキー作ってみたいんだよね。バターたっぷりの」
「二階にもオーブンありますよ」
「でもキッチン汚しそうだし……」
「初めては誰でもそんなものです。気にしません」
涼さんのクッキー、食べてみたい。
「えー、A型の朝登くんじゃあ説得力ないよ」
「うおっほん」
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