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溺愛×試練 七
「うっわー、これエロいわ」
おれは、俺と涼さんの関係の終わりを示すような下品な声。
といっても、ようやく明日休みという水曜のディナー前だ。
厨房から見えない一番奥の席で、あの女子高生二人と涼さんが騒いでいる。
「だ、だめかな、これ」
「アリ」
「寧ろ毎日穿くべき」
「毎日は無理だよ」
何をそんなに騒いでいるのか、涼さんにケーキを持っていくついでに見に行く。
すると俺に気づいた女子高生二人が慌てて机から何かを隠した。
「お前たち、騒がしいぞ」
「聞こえてたの!?」
何故か涼さんの方が慌てて身を乗り出している。
「聞こえてないけど、どうせまた俺がA型とか言いたいんだろ」
「ちが、あ、それ、美味しそう」
「ああ、抹茶アイスケーキ。ケーキ屋から試作品貰ったんだが」
「キャー食べる!」
「お前らじゃない」
最近、涼さんに馴れ馴れしいこつらではなく、涼さんにあげたい。
「俺に?」
「ずるーい」
「じゃあ誰にもやらん」
一人寂しく食べようとすると、涼さんが受け取って素早く一口食べる。
「美味しい。抹茶好きの朝登くんが好きそう」
「……まあな。それなら指示道理盛り付けできるから、メニューに増やせるだろ」
「なるほど。あっ」
急に涼さんが背筋をぴんと伸ばすと、テーブルにアイスを置く。
「ちょっと、トイレ……」
「涼さん」
いきなり冷たいものを食べたから身体が冷えたのか?
「ふふふ」
この二人の怪しい笑いが余計に不安を仰ぐ。
何か企んでいなければいいけど。
「ごめん。アイス続きたべるよ」
「いや、無理しなくても」
「食べたいなら、一口あげようか」
ご機嫌な涼さんに一口貰って、テンションがあがってついなあなあにしてしまった。
最近、どうも誤魔化されてしまいすぎている。
「じゃあ今日はさっさと帰ろうっと」
「そうだね。頑張ってね、涼さん」
女子高生たちの意味深な会話にもついつい勘ぐってしまう。
黙ると怒っているとか怖いとか言われてしまう自分の身ためだ。
必死で押さえながらも、アイスを食べる涼さんを見下ろす。
距離は縮まっているのだろうか、と。
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