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第9話

未だにハルは俺と初めて出会ったときのことを思い出さない。 俺だけが、初恋のあの瞬間を憶えている。 でも、もう思い出さなくてもハルが今一緒にいてくれるから、それでいいとも思っている。 放課後になって、生徒会室でコーヒー飲みながら文化祭についての会議。 俺にとって、今年がハルと過ごす最初で最後の文化祭。 1年とはあっという間だ。 こないだ付き合い始めたと思っていたら、もう3ヶ月はたった。 「会長!ボーっとしないで! お姫様と早く会いたいなら、あんたが早く仕事終わらせればいいんですからね!」 「ごめんごめん、じゃあ予算通りで大丈夫そうだね。 あとは生徒に各クラスで出し物企画してもらって、こっちで被らないように集計しよう。 かぶったとこは、そうだな…クジかジャンケンが妥当かな…?」 「じゃあその方向で進めます。」 ・ ・ 会議はつつがなく終了し、そろそろ夕焼けになろうとする時間。 いつも通りに教室にハルを迎えに行くと、カバンだけ残してハルはいなかった。 トイレにでも行っているのかと思って、何気なく外を見たら 中庭で男と2人で一緒にいるのが見えた。

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