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第3話
営業成績トップのお祝いは、麻宮さんと愉快な部の仲間達で近くの飲み屋で開催されるのが常なのだが、今朝の態度が悪かったからなのか夜は2人で飲みに行こうと誘われた。
真新しいのれんの掛かった小料理屋の割烹で、女将一人がカウンターで料理を振る舞う、しっとりした店だった。他の客も居ないのに、女将は忙しいのか呼ばないと奥に引っ込んだままカウンターで二人きり。
「笠置って、彼女いないの?」
「えらく直球ですね、居ないと査定に響きますかね。」
「いや、それは大丈夫。朝のアレ、悪かったなと思ってさ。君は、ああいったふざけた会話は嫌いなんだね。今度から気をつける。」
おもむろに顔を近づけて向き合う。
「麻宮さんから見て、俺はつまらない奴ですかね。あぁいうノリに、ついていかないのって。」
「うっ…酒くっせ。いやぁ全然。でも言い方キツイと、僕、傷つくよ。繊細なおっさんだから。傷ついていじけて、笠置に仕事しこたま押しつけちゃうよ。アッハッハッ」
麻宮さんの、どこが繊細なおっさんだよ。
「笠置は仕事も出来てカッコイイからイジメたくなるんだよね。」
「麻宮さんが、それ言いますか?シングルになって、狙ってる女子社員や取引先がかなりいるって聞いてますけど。」
「ないない。奥さんに死なれて、僕はもう恋愛出来ないの。仕事以外、何やっても味気なくてさ。でも、笠置とか高遠とか、若いの一杯育ってくれたじゃない。それだけで何か嬉しくてさ、生きてる希望って感じるんだ。」
俺を見る目が潤んでる。
「もうね、君達若いのが成長してくれるのだけが、僕の楽しみ。本当に、頑張ってくれて、ありがとう。」
あまりにも突然、そんな事を言うものだからつい、本音が出てしまった。
「じゃあ、ご褒美くださいよ。」
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