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第8話
【恵果No5】
使った湯呑みを下げて、部屋へと戻ると先程見ていた図面がポツンと置かれているのが目に入った。
「忘れ物...でしょうか?」
持ち上げて中身を確認し図面であると解るとそのまま朝陽さんを追おうとしたら、玄関先に脩慈さんが立っていた。
「恵果...」
名を呼ばれなければ追えたのにと思いつつ足を止めた。
「どうかしましたか?」
「帰って来ても...お前はあいつでは満足出来なくて俺に縋るだろ?どうせ足りないだろうと来てやったんだが後を追うとは随分絆されたみたいだな」
見当違いにも程があると息を付いた。
「忘れ物を届けるだけですし、彼は仕事の話しかしてません」
「ならすぐ戻ってこいよ、抱いてやるから」
その言葉に返事は返さず、朝陽さんを追った。
はぁはぁと、息切れする位には走ったか、前方に人影を見て急に胸が熱くなる。
思わず、手に持った図面を上に掲げて駆け寄ろうとした時朝陽さんの背に這う手が見て取れて足を止めた。
ドクドクと、駆けたせいの心拍か今目に入る光景の嫌な予感なのか...
ゆっくり足を進めて、朝陽さんの前にいる人物が確認出来た。
雲英さん...思わず図面を握り締め身体が震えた。
恋人なのだから、当たり前だ。
私は少しでもこの人に何かを期待していたのか。
唇が重なっているのは後ろから見ても解る。
気が付けばパサリと図面を落として後ずさっていた。視線が合い私に気付いた雲英さんが朝陽さんの頭を撫でる。
「ん、もっと頂戴」
甘ったるい声に脳が痺れ目頭が熱くなる。
気が付けば逃げるように走り出して来た道を戻っていた。
◆
気づいた時には、もう脩慈さんの腕の中だった。
頭が追い付かない...朝陽さんが他の人と、あるわけが無いとでも思ってたなら相当私はイかれてる。
「恵果...恵果綺麗だ」
リズミカルに腰が弾み私の体は上下に荒く揺さぶられ、こんなに胸の内は黒いうねりに支配されて尚快楽を貪っている。
「ふっ、あっ!!!んんっ、もっと下さいっ!」
「っ、欲張りだな...こんなに淫らに俺のを搾り取ろうとしてる」
狂ったように、快楽にのめり込まなければ心が壊れると思った。
朝陽さんを突き放して、見送った日から貴方を思わなかった日は無かった...
「っ!!!出す、恵果だすぞ!」
暴れ狂った脩慈さんが全てを吐き出すと私の中から抜け落ちた。
あぁ...なんと虚しい...涙が止まらなかった。
脩慈さんは事が終わるとすぐに帰ってしまうのはいつもの事で、残された私はただ呆然と無理に脱がされた着物を下にしその上で心の痛みに耐えた。
その時だ、襖が開いて朝陽さんの姿をぼんやりと見た。
「...あなたという人は、どうして!」
あぁ、また朝陽さんは私に怒るんですか?とうに貴方は離れた人なんです...
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