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第31話

Side story (朝陽と雲英) 【朝陽】 次の休みに雲英の元を訪ねた。 部屋ではなく、外で会いたいと言われ公園の近くのオープンカフェで待ち合わせした。 少し遅れて現れた雲英はサングラスにマスクをしていたが、暗いレンズ越しにも瞼が腫れているのが分かった。 「誰かに殴られたのか?あの時の電話で聞こえた相手か?」 雲英はためらいもなく頷いた。 ウェイターが去ったのを確認し、腕を伸ばしてマスクを外すと、唇が切れて赤黒くなっていた。付き合っていた時は傷一つなかった顔のあまりの変わり様に胸が痛くなりそっと頬に触れると、静かに涙をこぼし始めた。 「ごめん、朝陽...助けて」 プライドの高い雲英がそんな事を言い出すほど弱っている事に驚いた。元はと言えば恵果さんを忘れるために彼を利用した事が原因で、あんな電話をするような事態にしてしまったのだ。 「もうそんな相手とは会うな、困ったら…俺を呼べばいい」 思わずそう口走っていた。 小さな選択を間違えながら、物事は予想しなかった方向に進んでゆく。 【雲英】 隠しきれる訳はないと思いながらも朝陽に会いたくて、呼び出しに応え、オレは朝陽の前に座った。 「誰かに殴られたのか?あの時の電話で聞こえた相手か?」 そう、心配そうに聞いてくる朝陽にオレは素直に頷いた。 座ってマスクを外されるのを黙って受けた。よほど酷いのだろう、驚いた顔で俺見て、頬を撫でられる温もりに涙が溢れた。 「ごめん、朝陽...助けて」 オレは縋るしか出来ない。 殴られて、蹴られてやっと朝陽がオレを見てくれてる。 「もうそんな相手とは会うな、困ったら…俺を呼べばいい」 その言葉に心が震える。 殴られれば、朝陽に会えるのだと。

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