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第32話

Side story (朝陽と雲英) 【朝陽】 恵果さんへの嫌がらせを止めさせる前には目の前の状況を解決しなければならない。そう思い、言い渋る雲英に暴力を振るった相手の事を問いただすと、ポツリポツリと話し始めた。 「初めは優しかった...朝陽の代わりでいいって。なのに、時間が経つと、朝陽の名前出すだけて蹴られ出して殴られて...」 俺が雲英に恵果さんを重ねたように、雲英は俺の代わりをその男に求めたのか。それを馬鹿な事、と笑える程子供ではなかった。 「その男と一緒に住んでいるのか?」 「たまに来る...だけ」と雲英はかぶりをふる。 「ならばもう連絡するな、来ても家に入れるな」 そう言いながら、ふと恵果さんを訪ねてくるあの男の事を思い浮かべた。 俺の言葉にこっくりと頷きながら、雲英は泣きそうな顔で言った。 「でも、オレ一人ではすぐに殴られて無理だ...朝陽、ねぇ、助けてよ」 「引っ越しは…できないのか?助けに、と言ってもここまで来るのには時間がかかるから」 「朝陽と一緒に住んでた家だよ?今更捨てられない!!殴られても殺されてもオレはあの家がいいんだ!」 予想もしていなかった反応に驚いた。それは単なる執着だろう、とはあえて指摘せず、とにかく早く問題を解決できる方法を考えた。 「助けて欲しいんだろう?助けるから、お前は引っ越して連絡先も変えるんだ。それでもまだ何かあったら俺に連絡を寄越せ」 俺の言葉に、雲英はようやく頷いた。 【雲英】 朝陽に聞かれてあの男のことを話す事になった。 「初めは優しかった...朝陽の代わりでいいって。なのに、時間が経つと、朝陽の名前出すだけて蹴られ出して殴られて...」 朝陽がこうやって真っ直ぐオレを見てくれるのは別れる前以来だ。 「その男と一緒に住んでいるのか?」 その質問に首を振った。 「たまに来る...だけ」 そう答えたら、大きくため息を吐きながら「ならばもう連絡するな、来ても家に入れるな」と言われてオレは素直に頷いた。 けど、もう朝陽を渡したくないから... 「でも、オレ一人ではすぐに殴られて無理だ...朝陽、ねぇ、助けてよ」だから、縋るんだ。 「引っ越しは…できないのか?助けに、と言ってもここまで来るのには時間がかかるから」 「朝陽と一緒に住んでた家だよ?今更捨てられない!!殴られても殺されてもオレはあの家がいいんだ!」 意地でも朝陽をオレの元へ戻したかった。 「助けて欲しいんだろう?助けるから、お前は引っ越して連絡先も変えるんだ。それでもまだ何かあったら俺に連絡を寄越せ」 オレはその言葉に頷いた。

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