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第40話

【朝陽 No.19】 「そんな事して…まだ我慢して下さいよ」 髪をかき分け首筋に沿って鎖骨まで唇を這わせてゆく。前合わせを開くと色白の肌が和紙を透かしたような薄桃に染まっていた。 反らされた胸の上で薄紅の胸の尖りがひときわ淫らに誘いかける。指の腹で表面を擦ると恵果さんは身を捩った。繰り返し弄っているとすぐに固くなる感触が愛おしい。 見下ろすと恵果さんは興奮で朱くなった目尻に涙を浮かべていた。 「気持ちが通じたというだけでこんなに幸せなのに、どうしてもっと欲しくなるんでしょうか…」 陳腐な問いに、恍惚の人は微笑んで俺の手を取った。 「それが、人の欲であり、業です…私ももう、待ち切れなくて...こんなになってます」 導かれて触れたそこが熱く張りつめているのが布越しにもはっきり分かる。そして自分の欲も呼応するように脈打っているのを改めて感じる。 今から心を持ってこの人の欲を満たしてゆくと思うと、思わず笑みがこぼれた。 既に濡れはじめている下着を焦らす様に撫でさするとまた腰が突き上げられた。 「恵果さん、自分で帯を解いて下着を脱ぐところを見せてください」 触れる手を止めて待っていると、その言葉に目を見開きながらも恵果さんはゆっくりと立ち上がった。 自分と肌を重ねるために帯を解く様子はこの上なく煽情的だった。見惚れていると乾いた衣擦れの音と共に前がはだけた。着物の隙間から匂い立つような均整の取れた身体が見えて、(たま)らなくなり唾を飲んだ。 「朝陽さん...下着は、恥ずかしい...私だけ脱ぐのは嫌です」 そう言うと恵果さんは(こら)えきれないようにシャツのボタンに手を掛けて外し始めた。 縺れる指先に思いがけず力が入ったのか音を立ててボタンが飛び、はっと息をのむ。 「そんなに焦らなくても、俺は逃げませんから」 手早く自分でボタンを外してシャツを脱ぎ、その下に着ていたタンクトップをたくし上げると、肌に恵果さんの手が添えられた。 「まだ、鍛えて居たんですね...」 そう言いながら胸から腹筋をなぞって臍へと移動する手の行く先に、いやがおうにも期待が高まる。 恵果さんの指が腰に触れる。促されるまま立ち上がる間に、微かな金属音をたててベルトが外された。もどかし気に動く手が、自分のズボンと下着を脱がしてゆくのに任せた。 服を全てを脱ぎ、目の前で誘いかける瞳に吸い寄せられて唇を合わせながら着物を()ぐと、腕が絡められて肌同士が求め合うように密着する。 浅く、深く舌を絡めあう、咥内の甘美な交歓の中、首筋から肩裏を辿り掌で脇腹を(まさぐ)ってゆく。腿に当たる互いの昂りを感じて、深く貪りたい気持ちを伝えるために背中にゆるく爪を立てた。 一瞬力が入った後、ふっと膝が崩れて恵果さんの身体が沈む。 腕に力を入れてすっかり腰の砕けた身体を支えると、こちらの気持ちが通じたかのように真っ赤な顔で見つめられた。

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