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第42話
【朝陽 No. 20】
脱力して躰を預けている恵果さんが何も言わずに部屋の隅の扉を指した。
――――まだ一度も入ったことのない部屋。
横抱きにしてかかえ上げ、連れてゆけばよいのかと顔を見ると黙って頷いた。
そこには、狭いけれどベッドと作り付けの棚があるプライベートな空間があった。部屋の大部分を占めているベッドに恵果さんを腰掛けさせて部屋を見渡した。
「ここに、入ってよかったのですか?」
ここが自分の私室であると答えながら、恵果さんは腕を伸ばして俺を呼んだ。
「部屋などいつでも見れます…今は私を見て」
先程の妖艶な様子と余りにも違うその素直な甘え方に心を擽られ、微笑みを隠せなかった。
そんな誘いに抗えるわけがない。これほどまで愛おしい人が、恥じらいもしがらみも超えてここで俺を求めているのに。
ベッドに腰かける恵果さんの前に跪いて手を取り、付け根から指先に向かって舐め上げると、浅く息を吐く気配がして脚の間で熱がぴくっと震えた。
「朝陽さん...」
小さく俺の名を呼んで、空いている方の手が動いたと思ったら恵果さん自身の屹立に向かった。
吐息を漏らしながら扱いている姿が直に本能を刺激し、暴力的な衝動に駆られる。
その気配を感じて恵果さんが閉じていた目を薄く開いた。自分の身体の両脇に無防備に投げ出された両膝を肩に乗せ、一気にベッドの上に押し進んだ。
「いつもそんな風に慰めているんですか?」
見下ろしながら沸き立つ気持ちを隠し切れずに聞いた。
「あの...はい。
このベットで貴方を思いながらあの時を思い起こしながら...何度も」
顔を真っ赤にさせながらも、その瞳には悦びと期待の光があった。ならば、それを満たしてあげよう。
「達するとこ、見せてください」
その言葉に恵果さんは躊躇いもなくこちらの手を取り、指を絡めて、再び淫らに快楽に没頭し始めた。
手を動かし始めて間もなく、掌に脈動を伝えながら短い嬌声と共に先端から欲望を迸 らせた。
浅く息を吐きながら弛緩してゆく脚をシーツの上におろし、そのまま吸い寄せられるように覆いかぶさって肌に唇を這わせてゆく。まっさらな雪に足跡を付けるように、着物に隠れる箇所をきつく吸い、時には歯を立てると緩んだ口元からまた嬌声が漏れた。
肌に赤い痕を付けられて、恵果さんは狂おしそうに眉根を寄せる。中に早く入りたい欲求に抗って深く呼吸をしながら、腕を伸ばして棚の奥からローションを出し手に取った。
「あの時は随分と急いて求めて来たのに、大人になりましたね?」
責めるでもなく揶揄うでもなく、懐かしむような口調で恵果さんはおっとりと言った。
「今更かもしれませんが、その分を今償わせてください」
掌の中で温まった柔らかい液体を指先から滴らせながら恵果さんに近づけてゆく。
指先が触れると、そこがピクっと反応した。
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