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第6話

慧の寝息が聞こえる。 俺は慧の横顔を眺める。 切れ長の二重に凛々しい眉。 高い鼻に綺麗な顎のライン。 惚れ惚れする。 俺は体を起こして 慧の少し厚い唇にキスをした。 慧の首筋に顔を埋め眠りの体勢をとった。 慧を好きだと思ったのは中学一年の時だった。 『おやすみ』とベッドに入ってから 隣りに慧が居ない事に気付いた。 慧は床に座ってベッドに凭れ掛かり荒い息を繰り返してた。 小さな声で誰かの名前を呟く慧。 始めは具合が悪いのかと思った……… でも月明かりに照らされた慧の顔は 興奮した雄の顔だった。 精通がまだの俺には慧の自慰は衝撃だった。 それと同時に『抱かれたい』と思った。 慧に抱かれたい…… 慧が好きだ…… 絶対離れたくない。 アレからもう6年が経とうとしている。 慧は誰とも付き合わないし好きな子の話しも聞かない。 慧はきっとあの呟いた名前の子が好きなんだろう。 でも 『ミキ』 そんな名前の女の子は周りにはいない。 ずっと周りにはいない。 慧は女の子が好きなんだろう。 当たり前だ……男なんだから。 俺とは違う。 否。 俺は慧だから好きなんだ。

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