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第12話

慧が『ミキ』って呟いた。 あの奥の個室で食事しているあの女の子が慧の想い人なんだ。 俺は嫉妬でおかしくなりそうだった。 でもあの女の子には彼がいるように見えたから………… 安心? 違うだろ。 俺も慧も男だ。 彼氏持ちを好きな慧。 慧が好きな俺。 どっちも報われない…………。 「こちらです。槇野様。 皆さまお待たせいたしました。」 「和、里奈悪いな。遅くなった。」 「違うでしょ父さん!!」 「えっ?」 「えっと青山さん、駐車場の手配本当にありがとうございました。」 俺は立ち上がってお礼を言った。 一度席に着いた父さんも一緒に頭を下げた。 「槇野様、お気になさらずに。 ごゆっくりお食事をお楽しみください。」 青山さんはにこやかに俺達の席を離れていった。 「マキちゃん大変だったな。」 「本当にまいったよ。 サト、卒業式出てやらなくてゴメンな。」 「ん。大丈夫。和也さんと里奈さんが来てくれたから……。 父さんも…………ありがと。 無事卒業しました。」 「サト、ナゴ、おめでとうな。」 「高瀬様、槇野様、お食事始めさせていた。」 始めて食べるホテルの焼肉は担当のヒトが付きっきりで肉を焼いてくれた。 肉は口の中に蕩けてなくなるほど柔らかく甘い味がした。 卒業しても変わらないであろう生活に安心し、 ミキを見かけたドキドキは治っていて 父さん達の卒業祝いを堪能した。 慧はいつもの調子に戻り、美味しい焼肉を堪能していた。 その姿に俺もホッとした。 慧の隣りは誰にも譲らない……。 美味しい焼肉なのに父さんと母さんの様子がおかしい。 食事の最中に何度か担当の人に話しかけようとしていたみたいだ。 デザートの杏仁豆腐は絶品だった。 最後にコーヒーとフルーツの盛り合わせが運ばれて来た。 「私はこれで失礼いたします。 お時間が許す限りごゆっくりご歓談下さい。」 そう言って担当の清水さんは席を離れていった。 途端に母さんはスマホを取り出し何かを検索し始めた。 「ねぇ和くん……。」 画面を見せながら声をかける。 「まぁ何とかなるさ、カードもあるし。 せっかくだからいただこう里奈?」 よくわからないが大丈夫みたいだ。 慧とフルーツの盛り合わせを堪能した。

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