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第3話

ーー side 柊 碧生 ーー 入社式も無事に済んで、今俺は自分の配属課に向かっている。 希望通り営業として採用されたけど、最初の配属は経理課だった。 新人は、顧客の顔、そして金の流れを知る事が必要、という社長の意向で、 最初の半年は窓口対応か経理を経験する事になっているらしい。 経理か、何か地味なイメージあるよなー。 でもま、女が多い課らしいから、色々と、困らないかな・・・ なんて思いながら本社6Fのホールから別棟の3Fにある経理課まで移動する。 後期採用の新入社員は俺を合わせて5人、俺以外は皆窓口業務に配属された。 廊下を歩く新入社員に、皆興味津々だ。 「わ、すごくカッコいい人がいる!」 「お~あの子可愛いな・・・」 社員達の下らない品定め。ま、学生だって、社会人だってそんなもんだよな。 自分で言うのもなんだけど、見た目にはかなり自信がある。 この外見のおかげで、正直今まで女に苦労した事はないし、勉強も元々出来る上に 大手にも就職できたし・・・人生かなり順調だ。 これからについて色々と考えながら歩いていると、経理課の入り口の前に今までに見たこともない位綺麗な男が立っていた。 身長は俺より少し低い位、細めの引き締まった体付きで、スマートにスーツを着こなしている。 ダークブラウンの少しくせのある髪は柔らかそうで、前髪は少し長めのセンターパート。 センターパートだから、綺麗な眉と大きなアーモンド型の二重がひどく印象に残った。 すっと通った鼻に、小さいけれど、下唇が少し厚くて魅力的な唇。 抜けるように白い肌と、髪と同じ色の色素の薄い瞳がマッチしていて、どれもとても高級な造り物のように美しい。 俺を見た瞬間、その綺麗な男は、造り物のような顔から一転、とても人懐っこい笑顔になった。 「柊 碧生(ひいらぎ あお)君だね!入社式お疲れ様です!待ちきれなくて、廊下で待ってたんだよ~~~~あ、俺は伊藤 蛍斗です!柊君の3期上になるんだよ。君の担当になるように言われてます!よろしくね。」 そういえば、半年間は、新人一人に教育係が一人付くって言われてたっけ・・・・ その人形のように美しい顔からは想像がつかない位の明るさに圧倒された俺は、 何も言えずにじっと伊藤という俺の教育係を見つめる事しかできなかった。 「さ、入って入って!皆待ってるんだ♪」 ドアを開けられ、そっと背中を押されて中へと誘導されて・・・ 触れられたところが、少し熱くなった気がした。

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