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第5話

ーー side 伊藤 蛍斗ーー 10月に入社してきた俺の初!後輩の柊君はものすごいイケメンだった。 初の部下という事で部屋に入ってくるまで待ちきれなくて、廊下で待っていたけれど 遠くから歩いてくる姿を見て思わず驚いてしまった。 黒髪で、少し長めの前髪を横に流していて、トップは短く束感のあるセット。 一見無造作なのに、爽やかな印象を受ける髪型。 目鼻立ちがくっきりしていて、きりっとした眉に幅広の二重、鼻が高くて、 少しだけ大き目の口・・ 男らしくてカッコいいんだけど、笑うと口角がキュッと上がって、人懐っこい印象。 女子社員があの笑顔がたまらないとかなんとか、いつも騒いでいる。 新人の教育係を皆嫌がっていたけれど、柊君を見て皆がすごく悔しがっていて・・・ ちょっとだけ得意になる俺。 俺の後輩、こんなに格好イイのに仕事もできるんだぞ~って言ってまわりたい。 柊君は配属から3か月もしない内に、通常業務を難なくこなすようになっていた。 う~ん俺もがんばらないと・・・・・・ 即戦力になってくれた柊君のおかげで、年末の残業は最小限だった。 でも、営業のササは忙しくてしばらく会えていなかったっけ・・・ この間は久々にゆっくり話せてかなり楽しかったな。 ササとは幼稚園からの付き合いで、就職先まで一緒だから腐れ縁もここまでくると自分でもすごいと思う。一緒にいるとすごく安心できるかけがえのない存在で、俺が大変な時に助けてくれて、つらいことがある度支えてきてくれた。家族には言えないことだって、ササになら相談できるし本当に家族以上の存在なんだ。 年始の営業開始日、正月休みの最終日にササとの楽しいお泊り会をして、俺はかなり元気いっぱいに出勤したんだけど・・。 今年の正月休みはいつもより短くて、いきなり月曜がスタートだったせいもあってか、 皆のテンションは異様に低かった。 「おはようございます・・・」 相変わらずイケメンな柊君。 けれど、連休明けの疲れからか柊君もなんだか元気が無いように見える。 「おはよう、明けましておめでとうございます。 今年もよろしくね、柊君。」 昨年の感謝の気持ちを込めて、丁寧にあいさつをした。 「っ、あ、こちらこそ、よろしくお願いします・・・。」 やっぱり、元気が無いな・・・ 今週の金曜に新年会がある。 やたら元気な課長が、「新年に新年会をせんでいつするんだ!」と言って、 皆の反対を押し切って強行したんだよね・・・。 経理課では、10月に柊君の歓迎会をして、月に一度は関係課との飲み会が入っていた。 柊君は、女子社員に恐ろしい程囲まれていて、それに嫉妬するヨッシーがさらに絡んで・・と、なんともカオスな飲み会が繰り広げられていたわけだけど・・ 週末の新年会、正月疲れの柊君を、俺が守ってあげなくっちゃ!と、 意気込んで、今日俺はいつも以上に働いていた。 昼過ぎ、ドアが開かれる音とともに、「お疲れ様です。」とよく知った声がして。 ササだ! 「佐々さん、明けましておめでとうございま~す!」 「お~佐々、久しぶり、お前相変わらずムカつく顔してんな~」 「寺本さん、今年もよろしくお願いします。吉岡は・・・・相変わらずだな・・・ そのウザい髪、切れば?」 「ぬあ~!うるせー!これは俺のアイデンティティーだ!!!!」 「はいはい、じゃあな、俺お前と違って忙しいから。」 「ぐわ~ムカつく!!!!」 営業の経費担当の寺本さんがササとあいさつを交わし、 入社以来モテるササに敵対心を持っているヨッシーが相変わらずの悪態をつく。 そういえば、寺本さんはササを狙っているって噂があったな・・・。 そんな事を思っていると、ひょこっとササが顔を出した。 「よ~蛍斗!昨日ぶり~ はは!」 「ササ~お疲れ様!外回り終わったの?」 「そ、蛍斗に会うために自分で領収書持ってきたぜ。 お、新人君、初めまして!」 「あ、ど~~も、柊です。よろしくお願いします。」 じっとササを見ていた柊君だけど、話しかけられると視線を外して生返事。 いつもの柊君らしくない、そっけない態度が気になった。 「柊君、ササは営業だから、いずれお世話になるんだよ、 それに、先輩にはちゃんとあいさつして。」 じっと俺の顔を見つめる柊君。 パッと立ちあがって、 「営業で採用された柊 碧生です、よろしくお願いします!」 と言ってササにペコリとお辞儀した。 言い終わって、また、じっと俺の顔を見る。 新人だし、まだ色々と分からないよね。 出来を伺うような視線が、頼られている気がして嬉しかった。 「ん。よろしくな。 ・・・じゃ、蛍斗、気をつけろよ・・・・。」 柊君の挨拶を聞いて渋い顔をしたササは、そう言って手をヒラヒラさせながら課を出て行ってしまって。 何に気をつけるの・・・? さて!疲れている柊君の為に、今日は残業にならないように頑張らないと! ササの言葉をすっかり忘れて、俺は再びパソコンに向かったのだった。

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