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第17話
ーーside 伊藤 蛍斗 ーー
スーッ・・・スー・・・・
ササの大きな腕に抱きこまれて身動きが取れずにいると
頭の上から規則正しい寝息が聞こえてきて・・・
ササ、寝ちゃったの・・・?
腕の中からそっと見上げると、いつも通りの凛々しくて男らしい寝顔があった。
すっかり寝ているハズなのに、その腕にはしっかりと力がこもっていて、無理に動くと起こしてしまいそうだったから、俺は大人しくじっとしている事にした。
こんな風に抱きしめられていても、ササからの告白が信じられない自分がいて。
だって、ササは今まですごく可愛い彼女が何人もいたじゃないか・・・
いつから、俺を・・・・・・・・?
小さな頃からずっと傍にいてくれて俺を守ってくれていた。
大切な、大切な幼馴染のササ。
昔から格好良くて、皆を引っ張って行ってくれる人気者で。
俺がピンチの時は何度も助けてくれて・・・
男らしくて優しいササは俺の憧れだった。
そんなササからの突然の告白。
愛してると言われた後、ササの手が俺の顔をゆっくりと包み込んだ。
男なのに、すごく色気のある表情でササに見つめられると、何故だか心臓が忙しなく動いて・・そして、ササの顔が近づいてきて、そのままキスをされた。
避けようと思えば避けれたのに。
ササの顔が近づいた時、思わずビクリと動いた俺を見て、一瞬切なそうな表情をしたササを見ると、俺は動けなくなってしまったんだ。
・・・・触れるだけの優しいキス。
ゆっくり離れて行くササの唇をつい目で追った。
奥二重の切れ長の瞳が伏し目がちに開かれていて、男らしい高い鼻の下にある、形の良い唇・・・・俺、今ササとキスしたんだ・・・・。
実感すると、急に恥ずかしくなって、顔がカーッと熱くなった。
『蛍斗、愛してるよ・・。これからもずっと傍にいたい・・・。
急がないから、俺の事、考えてみて。』
俺だって、ずっと傍にいたいよ・・・・
付き合わなかったら、俺達もう一緒にいられないの?
親友だと思っていたのに、告白されて・・普通は、男からキスされたら嫌なものだよね・・?
恥ずかしいとは思っても、嫌とかじゃなくて。
今だって抱きしめられているけれど、その逞しい大きな体に包み込まれる事が少し心地よいと思っている自分がいて。
柊君の時だってそうだ・・・・
俺は、男のくせに、一体なんなの。
ーーー『君からは、淫乱な香りがするからね・・・』ーーー
お兄さんの言葉が頭をよぎる。
嫌だ、そんな事ない・・俺はそんな・・・・・・・。
俺は自分が分からなくてグルグルと思考の海を漂った。
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いったい何時間経ったんだろう。
いつの間にか俺も寝ていて、起き上がってベッドを見渡すとササは居なかった
もしかして、夢・・・・・?だったのかな・・?
トントントンーーーー
キッチンから音がする。
ササ・・・?
ゆっくりと起き上がると、俺はハッキリしない頭でリビングに続く扉を開いた。
「よー蛍斗、起きたかー?」
キッチンから俺を振り返って、オタマを片手にニカっと笑うササ。
あ、いつも通りだ。やっぱり、あれは夢だったのかな・・・・。
「うんーーー。すっかり、夕方だね・・・ササ、ご飯作ってくれてるの?」
「もう出来るぜ。座ってろよ。」
「俺、手伝うよ。」
そう言って、ササの横に並ぶ。
覗き込むと、美味しそうなオムライスとオニオンスープが出来上がっていた。
「わ!嬉しい~!俺の好物だ!運ぶね!」
「まずは胃袋からってな!ハハッ。まあ、お互いのメシ食うのはいつものコトだけどな。じゃ、頼むわ!」
「え、・・夢じゃ・・・・」
「何、蛍斗、さっきの俺の一世一代の告白、夢だと思ってたのかよ!」
ひでー と言いながら、イタズラな表情で笑うササ。
夢じゃなかった・・・じゃあ、俺、ササとキス・・・・
思い出してまた顔に熱が集まる・・・
「蛍斗、何思い出してんの?はは。もっかいしてやろうか?」
「もー!ササからかわないで!じゃ、俺あっちで待ってるから!!」
二人分のオムライスとスープをトレーにのせて運ぶ。
後からお茶とスプーンを持ったササがやってきて、
いつも通り、リビングのローテーブルの前に並んで座った、んだけど・・・
隣に座ったササと俺との距離は、お互いの腕が触れる位近くて。
いつもより近すぎる距離に少し戸惑ってしまった。
「冷める前に食べようぜ。いただきます!」
「いただきます・・・」
「何、蛍斗テンション低い。」
「んーーーだって・・・んむ。。美味しい!!!!」
「はっ、ゲンキンなヤツ!」
そう言ってニカっと笑ったかと思うと、突然覗き込むようにササの顔が近づいてきた。
何?と、問うより早く、ぺロリと唇の端を舐められてーーー
「んなっ・・・・何!!!!」
慌てて手で口を覆う。
「ケチャップ、付いてたから取ってやっただけ。蛍斗、いい反応するなー」
クックと笑いながら俺を見つめるササはやっぱりイタズラな表情で。
「何だ・・・やっぱりからかってたの・・・俺、すごく真剣に・・・んっ・・・・!」
ササの左手が俺の後頭部に伸びたかと思うと、そのままふわりと引き寄せられて唇を奪われた。
「ん、ササ・・・!!!」
チュ・・チュ・・・クチュ・・・・・・・
深いキス。俺、柊君としたのが初めてだったけど・・・
柊君とはまた違う、ササのキス。
緩く、ねっとりと絡みつくようなキスに呼吸をするのも忘れて惑わされる。
「んっ・・・・・ぷはっ・・・・・!!!]
「は~・・・キスだけで、蛍斗はこんなになんの?可愛い・・・・・」
「可愛くなんて・・・」
「柊に、先越されたんだよな?くそっ。もっと早くやっとけばよかった。俺は本気だから。伊達に長く幼馴染やってねーからな。覚悟しとけよ、蛍斗。」
妙に爽やかに言い放ったササの言葉に、俺はただただボー然とするのだった・・・・。
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