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第21話

寝室から飛び出してきた柊に目をやると、ホワイトベースにグレーラインの入ったボーダーパーカーに、同じ模様のロングパンツを着ていた。 形の良いデザインで、カラーも柊にピッタリだった。 それから、柊に続いて俺も着替えたんだけど・・・ 俺のは、柊とデザインは同じで、濃いグレーをベースににブラックのボーダーだった。 実際着てみても、生地も形もすげーいいんだけど・・・ 何、この柊とのお揃い感・・・・。 柊も俺と同じで、なんとも言えない目で俺を見ていた。 「わー二人とも、すごく似合う!さすがだね!」 蛍斗にそう言われてまんざらでもない俺達・・・ 柊も、バカみたいにニコニコしてる。 「伊藤先輩、これめちゃくちゃ手触りいいですね。モコモコのフワフワで・・すごいです。」 そう言って、蛍斗に腕を差しだす柊。 そして、出された腕を素直に受け取って撫でる蛍斗。 「でしょでしょ!?俺も、見つけた時に手が離せなくなっちゃって!」 こいつら・・・自然にスキンシップが多すぎるだろ・・・ 柊のやつ、さっき「恋愛したことなかった」的な事を言ってたヤツとは思えねーな。 あ、そうか!遊びの数はこなしてんだもんな。 ちょっと可愛いヤツとか思った俺がバカだった。 俺も本気で行かねーと、鈍感な蛍斗のことだ、あっという間に喰われちまうな・・・ 「蛍斗・・・お前もそろそろ部屋着に着替えてきたら?」 「あ、そーだね!明日も仕事だしね! ・・・・・ツ・・・あ、の・・・ちょっと、待ってて・・・」 少し赤くなってモジモジと寝室に消えて行った蛍斗。 何、今の間・・・・今のセリフのどこに赤くなる要素があった・・? チラリと俺とお揃い!?のルームウェアを着た柊を見ると、 同じように唖然としていて・・・ 「佐々先輩・・・今の、何ですかね・・・。何か俺ドキドキしちゃってるんですけど。」 「蛍斗の考える事は、腐った俺達には想像もつかねーけど・・ でも、絶対俺達が考えてるよーな事じゃない事は確かだ・・・。」 「・・・ですよね。」 パタン・・・ 少しして寝室から出てきた蛍斗を見て俺達は納得した・・・ 三人、お揃いだったんだ・・・・って事を・・・・ 俺と柊が顔を見合わせて噴き出す。 「え~!やっぱりダメだった!?二人がお揃いっていいなと思っちゃって、つい俺のも買っちゃったんだよ~」 蛍斗のは、ブラックをベースに淡いグレーのボーダーだった。 正直、小さな頭、高い身長にスラリと伸びた長い手足、そして中世的な整った顔。 寝室の前に立つ蛍斗は雑誌から出てきたモデルみたいで、白い肌に黒が良く似合っていた。 「ダメじゃないです!俺、伊藤先輩とおソロ嬉しいですから!」 「カッコいいじゃん蛍斗。俺も、蛍斗とお揃い嬉しいよ。」 「は~良かった。男同士でお揃いとかキモイって言われるかもって正直ドキドキしてた!はは」 すましたような綺麗な顔なのに、その表情は豊かでとんでもなく可愛い蛍斗。 その純粋さにいつも癒される。 時間はもう九時。 ソファーを背もたれにして、蛍斗を真ん中に挟んで飲み会が始まった。 俺達が用意していたテーブルの上の酒で乾杯する。 三人での会話は意外に盛り上がって・・ 酒が入ったせいか、柊も俺に普通に接してくる。 相変わらず、蛍斗に近いのが気に食わねーけど・・・ 飲み始めて2時間程して、ほぼしらふな俺と柊、そして少し酔っている蛍斗。 蛍斗がここまで酔うの、久しぶりに見たな。 くやしいけど、柊もいて楽しいんだろうな。 「は~伊藤先輩はいいニオイがしますね・・・。俺、この香り落ち着きます。」 「ひゃ、ビックリした・・!」 柊は、そう言って横に座る蛍斗の首筋に鼻を埋めた。 くすぐったさから、柊から逃れるように身を捩った蛍斗の肩が俺にぶつかる。 二人が離れた一瞬・・・・俺は蛍斗の肩を抱き寄せて柊から奪うと、 そのこめかみに軽く口づけをした。 ふわり、柔らかい髪と肌の感触。 ちゅ・・・・・ 「は!?佐々先輩!何してるんですか!」 「お前だって、蛍斗の首にキスしただろ・・・」 「まだ、してないです!香りを堪能していただけです!」 「ちょ、二人とも急にどうしたの!そういう事は女の子に「蛍斗 じゃなきゃ意味ねーんだよ!」 被せるように言うと、蛍斗が驚いた顏をして見つめてきて… ニヤリと笑って俺は続けた。 「蛍斗、俺の気持ち変わってねーから、冗談とかじゃないぞ。お前が好きだ。」 俺の方を向いて、キスをしたこめかみに手を添えたまま真っ赤になる蛍斗。 突然、後ろから柊が蛍斗を抱き寄せて、首筋にキスを落とした。 ちゅ・・・ 「わ!!わ・・・・柊君・・・!何!?」 「俺も、伊藤先輩が好きです!俺キスしてないのに・・・佐々先輩だけずるいです。」 「何・・・それ・・・・・好きって・・・」 相変わらず、すました顔して子どもみたいなモノ言いが俺の調子を狂わせる。 けれど、蛍斗が好きで好きでたまらないという柊の雰囲気が嫌じゃない自分がいて。 俺が大好きな蛍斗が他のヤツに大切にされている。 それがそんなに嫌じゃないなんて・・何なんだこの感覚。 ふと時計をを見ると、もう12時を回っていた。 「はぁー 柊、子どもみたいな事言うなよ・・・そろそろ、寝るか・・・。」 「伊藤先輩、今日一緒に寝ましょうよ。」 「え~狭いでしょ。布団だすよ~」 「・・・そういえば蛍斗、お前ん家・・布団一組しか無くねーか?」 「あ・・・・っ  そーだった・・・」 「じゃあ、俺と伊藤先輩がベッドで寝ますから、佐々先輩は布団でどーぞ。」 何が・・じゃあだよ・・・ 「いやいや、俺と蛍斗が一緒にベッドで寝るから。柊、お前が布団で寝ろ。先輩命令だ。」 「何皆して・・そんなにベッドがいいなら、俺が布団で寝るから二人でベッド使ってよ。」 「ブッ・・・!」 「ちょっ!柊君大丈夫!?」 「だいじょ・・・ぶ・・・・じゃないです! 佐々先輩と一緒なんて・・・・ほら、佐々先輩大きいから! 小さい二人、ベッドで寝ましょう!!!」 「なるほどー」 「蛍斗、納得するんじゃねーよ。柊と蛍斗を二人で寝かすワケねーだろ・・・お前、何する気だよ。」 「何もしませんよ!!!!」 「うーーーん・・・・じゃあ、三人で寝る?さすがに狭いと思うけど、ダブルベッドだしなんとかなるかな。」 蛍斗、お前俺達と寝る事が何を意味するか全く分かってねーだろ・・・ もしかして、分かってて・・・いや、それは無いか・・・。 柊もいるし、さすがに変な事は・・出来ないしな。 「柊が譲らないなら、仕方ないな・・・。」 「ものすごい妥協ですけど・・・それでいいです・・・。そういえば、気になってたんですけど、何で伊藤先輩のベッドダブルなんですか・・?同棲でも、してたんですか・・・?」 「え!まさか!!!一人暮らしする時に、家具屋さんに行ったら、男の人の一人用といえばセミダブルですって言われて、ダブルとそんなに値段が変わらなかったから、寝心地がいいかなと思ってダブルを買っただけだよ。深い意味、ないから!」 そういえば・・・その家具選びの場に俺もいたんだよな。 そして、その時ダブルをさりげなく勧めたのは・・・俺だ。 もしかしたら一緒に寝れるんじゃないかって、そんな俺の夢が・・・ 今ここで、最悪な形で実現しようとしているーーーーーーー

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