24 / 32

第24話

ーー side 柊 碧生 ーー 『俺もー限界です・・・伊藤先輩・・・出る・・ツ!』 ヤバイ、俺、このままじゃ先輩の口の中に出してしまうーー! そう思って、慌ててモノを引き抜いたけど、間に合わなくて・・・ 中途半端に引き抜いた状態で、先輩の薄く開いた唇と蒸気した頬に勢い良く射精してしまった。 伊藤先輩の綺麗な顔に、トロリとした精子がかかっている。 その光景がすごくいやらしくて・・・ 佐々先輩のモノに穿たれて気持ちいいと喘ぎながら、前に触れてもいないのに伊藤先輩は逝ってしまった。 同じ男のモノなのに、綺麗なピンク色をした先輩のアソコがビクビクと揺れて精液を吐き出す姿に釘付けになってしまう。 俺、こんなに興奮してるのは初めてだ・・・。 その光景を見ているだけで、俺の股間はまた元気を取り戻してしまった。 次は、俺の番だ・・・! そう意気込んで佐々先輩を押しのけようとした時、伊藤先輩がコトリと気を失ってしまった。 「えええー!!!また・・・俺、最後までできなかった・・・」 「ふっ・・ま、そう焦るなよ。」 「佐々先輩は伊藤先輩と繋がれていいですよね!俺なんて・・・」 「蛍斗の顔にそんな事しといて、不満かよ・・クックッ・・・」 「う・・まあ。でも、ヤバいな。伊藤先輩、めちゃくちゃエロかった・・・。」 「俺も、予想外だったな・・。あいつ蛋白な感じだったから、まさかこんなにすぐに感じてくれるなんて思わなかった・・。」 二人で伊藤先輩を見下ろす。 普通なら、男が精子にまみれてる姿なんて見れたもんじゃないハズだ。 だけど、この伊藤先輩という人は・・・なんて、いやらしくて美しいんだろう・・・ 「はぁ・・・・エロくて・・綺麗だ・・・こんな事になって、俺本当に我慢出来ないかも。」 「・・・柊、後始末するぞ。手伝え・・」 「あ、ハイ。」 スウェットを履いて、急に黙って浴室に向かった佐々先輩は、少しして手に濡れたタオルを二つ持って帰ってきて、片方を俺に投げてよこした。 「なぁ、柊・・・お前に話しときたいことがあるんだけど。」 「何ですか・・?」 「初めて蛍斗に迫った時、お前は・・強引だったか・・? その行為に蛍斗は抵抗したか・・・・?」 俺を見つめて問いかける佐々先輩は、少し辛そうな顔をしていて・・・ 何なんだよ・・・ 「あんま、しなかった・・てか、ほとんど抵抗されてないです。 伊藤先輩はいつも他人優先で、こんな時まで俺に遠慮してるのかって思ったら、なんか悔しくて・・むしろ少し乱暴だったと思います・・・」 そっか・・・佐々先輩は小さくそう呟くと、伊藤先輩の体を丁寧に拭きながら過去の話しを始めた。 「蛍斗と俺は幼稚園からの幼馴染だ。蛍斗のやつ、昔は女の子みたいに可愛くてな・・・小学校の頃、俺と二人で虫取りをしていて、お互いに虫を追うのに夢中になって少し離れたんだ。そんで、蛍斗が一人になった隙に知らないおっさんが蛍斗にキスさせろって言って無理やり雑木林に連れ込もうとした事があったっけな・・・俺が異変に気がついて、騒いだら逃げてったんだけど。」 「小さい頃に、そんな事が・・・・ まあ、伊藤先輩が可愛かっただろう事は想像できますけど・・。」 「ん、まあ、そんな事はそれからも何回かあったよ。 ・・・でも、あの時の・・・あいつ・・・あの男との出来事が決定的だった・・・」 ・ ・ ・ それから、佐々先輩が見たモノ、後から伊藤先輩から聞いた話をつなぎ合わせて教えてくれて・・・ そんな恐ろしい事があったなんて・・・ 俺が小学生の頃に、そんな刃物を突きつけられるような事があったとしたら・・ 想像しただけでも恐ろしい。幼い心に、性の押し付けと死の恐怖。 「その時な、蛍斗・・・『俺の顔が・・・この匂いのせいでっ』・・・ってずっと泣いてたんだよ。首にはべったり血がついててな・・・その男に何言われたかは何となく想像がつくだろ?俺は、その時蛍斗の傍で一生守ってやるって誓ったんだよ。それから蛍斗はしばらく大人の男がダメで・・・今も、無理やり力で抑えつけられたら昔の事思い出して動けなくなるって言ってたよ・・。」 「・・・・・・・・。」 俺、なんて事してしまったんだ・・・ 勝手に勘違いして、強く抵抗してこない先輩に、一人でイライラして・・・・ 俺は、本当に自分の事ばっかりだ。 好きな人にそんな思いをさせてしまったって考えたら、目頭が熱くなってきた。 「そんな顔、すんな。」 そう言って俺の頭をくしゃっとかき混ぜた佐々先輩は、笑っているけど泣いてるような笑顔だった。 「確かに怖かったろうけどな・・・それは、お前が怖いんじゃなくて、過去の出来事が怖かったんだと思うぞ。現に、蛍斗はお前に普通に接してるだろ?」 「・・ッ・・・」 「バカ、デカイ図体して泣くなよ。」 佐々先輩の慰めの言葉につい涙がこぼれてしまって。 先輩は、俯いた俺の髪を今度は少し強めにグシャグシャとかき混ぜてきた。 顔を上げると、フッと笑いかけてくれて。 それは大人の男らしい表情で、くやしいけれど、カッコいいと思ってしまった。 「お前を泣かせる為に言ったんじゃねーぞ。これから蛍斗にアプローチするんだろ?その時、この事を頭に入れといて欲しかったんだよ・・・。蛍斗を怖がらせたくねーからな。」 そう言って、少し意地悪な表情で笑う佐々先輩。 恋敵のハズなのに、何でこんな優しくするんだよ・・・調子が狂う・・・。 「分かりました。それを踏まえて、ガンガンアプローチします。」 「ふっ。やっとお前らしい顔になったな。ま、俺は負けねーけど。」 「俺だって負けませんから!」 「ハイハイ、じゃあ、もう寝るぞ。」 「バカにしてますね!?もー!」 同じ人が好き同士・・・この掛け合いが妙に心地いいなんて・・・ 伊藤先輩を譲るつもりはない。でも、不思議と心は穏やかで。 どっちが伊藤先輩に腕枕をするか・・なんて事でまた言い争って、 俺達は伊藤先輩を挟んで眠りに落ちた。

ともだちにシェアしよう!