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俺とかなちゃんと先輩
かなちゃんにおかしな気持ちを抱き始めて数日が過ぎた。
かといって進展があるはずもなく、今日も通常運転である。
隣に並ぶかなちゃんのふわふわとした猫っ毛を横目にバス停へと歩く。
かなちゃんとお揃いの制服に身を包み、向かう先はもちろん同じ学校だ。
自宅を出て直線に200メートル程歩いたところにバス停があり、そこからバスに乗車して到着するまでおよそ20分。
駅方面へ向かうバスなので乗客が非常に多く、毎朝が満員状態でちょっと憂鬱になる。
バス停に向かうとかなちゃんの友人である神崎先輩が居て、こちらに気付き手を挙げた。
「おはよう、神崎」
「おはよう本郷兄弟」
「はよっす」
神崎先輩はむさい俺と同等な位男臭い。
だが決して本当に汗臭いとか、そういうわけではなく、野性味のあるイケメンだった。
同じバス停を使うくらいだ。
家も近所で、俺たちは所謂幼なじみというやつだった。
「バスきた」
「うわぁ。あれ乗れんのかな」
遠目から見たバスは立っている乗客ですし詰め状態のように見える。だけど乗らなければ遅刻する。仕方なく俺たちはバスに乗り込む。
「ほら本郷」
神崎先輩がかなちゃんをエスコートするように先に乗せる。腕を引き、やんわりと腰に手を添え、最後に尻を持ち上げるようにして体を支えてあげていた。
……?
ちょっと待て。
今まで大して気にも留めてなかったが、神崎先輩の手つきはおかしくないか?
かなちゃんのお尻を持ち上げなくたって、かなちゃんはバスに乗れるだろ。
仕上げに神崎先輩が手摺棒に掴まり、その腕でかなちゃんを囲う。
それはまるで姫を守るナイトのようだった。
そこまで考えて目の前の光景がどこかおかしなことに気付いた。
「……!?!?」
あれ……?俺、何で今まで気付かなかったんだろう?
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