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第12話

それは多分、今までかなちゃんをそういう目で見たことがなかったからだ。 「あれ?啓太?乗らないのか?」 かなちゃんの声が遠くに聞こえる。 「ご乗車ありませんか?発車します」 運転手のアナウンスの声ではっと我に返り、乗らなきゃ、と一歩踏み出そうとしたが扉は締まりバスは無情にも発車した。 「……?」 バスの窓越しにかなちゃんの焦った表情が見える。そして神崎先輩のにやりとした顔でひらひらと俺に向かって手を振る姿を見て確信した。 神崎先輩からすると、俺は邪魔者ということか。多分神崎先輩はかなちゃんのことが好きなんだ。そう考えればいつも一緒にいる俺を疎ましく思っていてもおかしくはない。 思い起こせば今までだってそんな場面は多々あった。然り気無くかなちゃんの腰に手を回したり、肩を組んだり、抱き締めたり。まぁ、友達の範疇でもよくあるスキンシップとも取れる。だが何故俺がその事についてもやもやとした気持ちにならなくちゃいけないんだ。 答えはもう見えていた。でもこれは認めていいものなんだろうか……。 ふん、それより神崎先輩は最近のかなちゃんのチンコ見たことないだろ。俺はあるんだぜ。 妙な優越感に浸っていたら次のバスが到着した。さっきよりも混んでいる。俺はそこで揉みくちゃにならりながら登校したが、結局遅刻してしまった。

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