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第15話

様子がおかしかった俺を教師は腹痛のせいだったのかと、すんなり承諾してくれた。腹を押さえて教室を出ると、保健室まで大急ぎで直行した。 「失礼しまーす……」 保健室の扉を開け中へ入る。保健医は不在のようで机の上に会議中の札が立て掛けられていた。 かなちゃんはまだ来ていない。 全力疾走で障害物に躓いて転ぶなんて、絶対擦りむくなり何なり、間違いなく怪我をしている筈だ。かなちゃんのキレイな白い脚に傷がついたかと思うといてもたってもいられない。 あーもうっ、何であそこで転ぶかなぁ~……。 かなちゃんを過剰に心配に思うのは今に始まったことではない。思い返してみると俺とかなちゃんの身長差が開き始めた辺りからだろうか。その頃から少しずつ俺のかなちゃんを見る目が変わってきたのだろう。兄と慕ってはいたが、同時にどこか守ってあげたい存在でもあった。だから既に芽は出ていたのだ。兄であるかなちゃんを好きだと思ってしまう、邪な心の芽が。 かなちゃんを心配しながらただ入り口に突っ立って悶々としていたら、かなちゃんが現れた。 「かなちゃん……!」 「あ、啓太。なんでここに?」 「え、だって、窓からかなちゃん転んだのが見えて……」 いや、それよりもそれどころではない。 「おー弟。お前それ仮病ってやつか?」 「い、いえ、俺は腹痛です!」 「ほう。そらまた元気な腹痛で」 嫌みったらしく疑わしげな眼差しを向けてきたのは神崎先輩だった。 どういうこと……!?何故神崎先輩が!?しかもなんで抱っこなんて!歩けないほど怪我をしたというのか!? 目の前のかなちゃんは神崎先輩にお姫様抱っこされていた。

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