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第24話

自宅に帰ると、かなちゃんはいつもと変わりなく俺と接してくれて、保健室での出来事が嘘のようだった。 かなちゃんがあんな風に泣いたので、少なからず家でも気まずい空気が流れるだろうと予測していたが、怖いくらいに普段通りで少し拍子抜けしてしまった。 あれはちょっとした俺の悪戯だったとでも思われているのだろう。わかったのは、俺がかなちゃんのことを好きな気持ちなどこれっぽっちも伝わってはいないということ。一人の男として意識などされていないということ。 まぁ……普通はそうだよな。こんなむさっ苦しい男より、女の子に興味持つ筈だし。 でも、かなちゃん、まじでエロかわだった……!! かなちゃんを泣かせたくはないけれど、かなちゃんに振り向いて欲しいし、またあのエロ可愛いかなちゃんも見たい。 その夜、かなちゃんを落とすにはどうしたらいいのか、かなちゃんを泣かせずにエロいことするにはどうしたらいいのか、そんなことを悶々と考えながら眠りについた。我ながら最低な弟である。 翌朝、家の近くのバス停に、いつもと同じように神崎先輩が立っていた。 「よおっす、本郷兄弟」 「神崎おはよう」 「はよっす」 神崎先輩がかなちゃんへ身体を向ける。そしてかなちゃんの頭に手をぽんと乗せた。 「膝、大丈夫か?」 「うん。神崎が保健室に運んでくれたから」 「おう。大したことなくて良かったな。それで弟は?腹痛治ったのかよ」 「はい、ばっちり」 「へぇ。軽~い腹痛で良かったな」 え、なんか怖いんですけど……。野性味溢れるワイルドな神崎先輩が眼光を鋭くして俺を睨む。俺、何かした?いや、してない。……してない筈、だけど。 もしかして……。保健室での出来事を、見られていたり……? ブロロロ……と音と共にバスが到着してかなちゃんが先に乗り込む。神崎先輩が俺に向かって先に乗れと顎で指示するので、お先にと言う意味でぺこっと頭を下げると耳元で囁かれた。 「お前、弟のくせに、兄ちゃんのこと好きなの?」 ーーーーー!!! ばっと振り返ると神崎先輩がにっと笑って、俺の背中がぶわりと鳥肌立つ。 マジかよ~~~っっ!? ……大変です。……俺の邪な、かなちゃんへの気持ちは、恐らくライバルに当るであろう神崎先輩にバレていました。

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