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第27話

拭いきれていない牛乳の滴が頬に付いている。そこへ吸い寄せられるように手を伸ばした。 「かなちゃん……」 かなちゃんの白くて細い首筋と頬を手で挟んで顔を近づけた。ミルクの甘い香りがする。 どこもかしこも、甘くて美味しそうだよ、かなちゃん。 俺はかなちゃんの頬に唇を寄せ、残った牛乳の粒をペロリと舐める。 その瞬間、かなちゃんの肩がピクリと震えた。 頬から瞼へ唇を移動させ、細い鼻筋を唇で食む。 「ん……ふふ、啓太、犬みたい」 かなちゃんは屈託のない笑顔を見せる。かなちゃんから見た俺は、犬のような可愛い弟だ。だからこうして無防備に自分を差し出せるのだ。 だけど、俺は……。 「かなちゃん、好きだよ」 「?」 たまらず、溢れてしまった気持ちは、するりと言葉になって現れた。 本当に好きなんだから仕方ない。 何のことかわからないといった表情のかなちゃんに、俺は、もう一度言った。 「かなちゃん、好き」 かなちゃんの返事を待たずに、今度は唇にキスしようとした。その時。 「ちょっとあなた達、いつまでじゃれてるの!早く朝ごはん食べて学校行きなさい!」 「あ……はい」 「はーい」 意味もなく朝はピリピリしている母さんの登場で、キスはお預けとなった。母さん出現のタイミングが絶妙過ぎて憎らしい。しかし親に知られたら一大事だ。少し慎重にならなければ。 制服に着替えてテーブルに着く。すぐにかなちゃんも着替えてやってきた。 俺の隣に座ってかなちゃんが言う。 「最近あんまり啓太に構ってなかったから、啓太ちょっと寂しいんだろ?もっとお兄ちゃんに甘えていいんだよ。ね?」 「え……」 ね?と可愛く小首を傾げるかなちゃん。 なるほど、そうか。そういうことだったのか。かなちゃんは俺を寂しがりの弟と思っていたのだ。 …………。 このままでは、かなちゃんが俺に振り向いてくれる日は来ないだろう。だったらこの機会を逃してはいけない。甘えに甘え、甘えまくって、かなちゃんの心も身体も俺に陥落させてやる。 俺の邪な心は更に膨らんだ。

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