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第31話
かなちゃんをいやらしい目で見るようになってからというもの、二人きりの空間にただ居るだけでムラムラしてしまう。
この間、保健室でかなちゃんを泣かせてしまった手前、ムラムラしたからといって勢いでそういうことをしてしまうのは良くないと悟った。
だからムラムラしちゃいけない筈なのに……。
目線を下げた俺は眼玉が飛び出そうになった。
「……っ!」
どうして俺の息子はまた臨戦態勢なんですか!!!!
自分で言うのも何だが、男子の思春期怖い。なんでこんなにすぐ勃っちゃうの!?
なんだかドキドキする心臓と同じリズムでむくむくと息子も成長してしまったような気がする。
体育座りのような形で脚を山型に折って座っているので、スラックスを持ち上げている愚息にかなちゃんが気付くことはないと思うけど、……まずいよな。
「啓太?どうかした?」
「ん?何でもないよ。今日の弁当何だろうね、かなちゃん」
「そうだね。俺、母さんのミートボール好きなんだけど、今日は入ってるかなぁ」
「そうなんだ。知らなかった。っていうか、弁当一緒に食べるなんて初めてじゃねぇ?」
「うん。だね」
俺の口元が思わずにやけた。弁当のミートボールが好きとか、可愛い。
平静を装って弁当の包みを広げる。弁当を包む青いバンダナを広げると中には黒い弁当箱。隣をちらりと見るとかなちゃんも包みを開けている。
俺とかなちゃんの弁当は色違いだ。
俺は青のバンダナで包んだ黒い弁当箱で、かなちゃんは水色のバンダナと濃紺の弁当箱。弁当箱の蓋には箸入れがついていてちょっとだけ便利。
蓋を開けると白米の上には海苔が敷いてあり、白身魚のフライとポテトサラダ、ミニトマトにかなちゃん待望のミートボールが5個、カップケースの中に入っていた。
「やったー!ミートボール!」
何だろう、声もすごく可愛く聞こえる。ほんと、可愛い。
思わずちらっとかなちゃんを見る。
かなちゃんは嬉しそうに微笑んでいた。
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