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第32話
山なりに立てた膝へ器用に弁当箱を乗せ「いただきます」と言ってかなちゃんはの海苔の乗った白米を箸で口に運ぶ。
血色の良い赤みの強い唇がほわっと開いて赤い舌が覗く。
「……っ」
その唇がのり弁をぱくっと包み込む。
「おいし」
可愛い。っていうかやらしい。
かなちゃんの口元もこんなにエロかったっけ?
キス、したい。
あの唇で、あの舌で、舐められたい。
かなちゃんの小さな口に突っ込みたい。
……あ、やべぇ。
ほんの数秒の間に、妄想の世界へ飛んだ俺は、はっと気付いて、いけないものを見てしまったかのようにかなちゃんからふいっと顔を逸らした。
それにしても股間が落ち着かない……。
俺は頭をぶるぶると横に振るう。
だめだ、だめだ!今は昼飯時!ここは学校!!動物じゃあるまいし、獣じみた真似は出来ないぞ!
自分を叱咤激励(?)して俺もまたかなちゃんと同じように立てた膝の上に弁当を乗せた。
「いただきます」
のり弁に箸を入れるとかなちゃんが口をもごもごさせながら話しかけてきた。
「啓太、何か俺に話あるんだよな?」
「え、あぁ、うん……」
「友達と一緒に昼食べたくないって言ってたけど、もしかして友人関係でうまくいってないの?」
「あー、いや……」
いや、じゃないだろ俺!
そうだ。友達とうまくいってない感じに匂わせてここへ漕ぎ着けたんじゃないか。
うーんと、うーんと、なんかそれっぽい事を言って誤魔化さないと……。
「話にくいことなんだろ?……俺も友達関係は結構困ることあったから、悩む気持ちはわかるつもりだよ」
「え、かなちゃんが?どんな風に困ったの?」
「えっと……」
かなちゃんは言い淀む。頬がうっすらと赤くなっていた。
「その……。友達として仲良くしていたつもりだったのに、いつの間にか恋愛対象として見られていて、それに気付かず相手に思い違いをさせていたことが何回か……」
「はあっ!?」
なんだそりゃあ……。
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