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第34話
びっくりしてるの?かなちゃん。
俺に好きな人がいるって珍しいこと?でも確かにそんな話をかなちゃんとしたことなんてないもんな。
だったら、真実を伝えたら、きっともっとびっくりすることだろう。
でも今はまだ、自分の気持ちが本物の恋なのか、はたまた新しい性癖に目覚め、嵌まってしまっただけなのか。
多分恋なんだとは思うけれど、まだ少しもやもやとしている部分があって。
だからまだ伝えられない。
でも、伝えたい……。
「……それって、啓太がお昼一緒に食べるのが気まずい友達と関係あったりする?」
「え、あ、あー……」
やばい。
話が違う方へ転がりそうだ。
だけど話の辻褄を合わせるには、ここは頷いておかないと不自然だ。
どうする、俺!
そうだ。
取り敢えず男同士はどうなのか、かなちゃんに確認したい。
「まぁ……。そんなとこ」
「そう……なんだ」
「引いた?」
「え、いや、そんなこと……。第一啓太カッコいいしモテてもおかしくないって言うか」
ああ。俺が想いを寄せられている側だと勘違いされている。
「や、そうじゃなくて。俺が同性の友達を好きになってしまったって話」
ということにしておこう。
「そうなの……?」
かなちゃんの顔色が変わった。かなちゃんの眉が少し下がって口角の上がっていた口元も下がる。表情が無に近い。これは、げ、啓太ホモだったの!?っていう顔なのか、はたまた、弟が禁断の恋に目覚めてしまった。どうしよう。兄として俺はどう接したらいいんだ!?っていう顔なのか。
まぁ間違いなく後者だとは思うけど。
「うん。応援してくれる?」
「う、うん……。相手は啓太の気持ち知ってるの?」
「知らないと思う」
「そう……」
だって。俺が今気になってる相手、それはかなちゃんだから。
「でさ、かなちゃん、お願いがあるんだけど」
「何?」
「キスしてみてもいい?」
「……俺と!?」
かなちゃんが驚いて箸から卵焼きをポトリと落とし、それは無事弁当箱へと着地した。
「うん。その、なんていうか、友達のことが好きなのかどうか自分でもハッキリとしてなくて。男同士でキスとかしてみればもしかしたら自分のことがわかるかもしれないと思ってさ」
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