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第35話

我ながら、何という謀略だろう。 かなちゃんの綺麗な心を欺いてその中へ入り込もうとする俺ってすごく真っ黒だ。 でも、でもさ。 目の前でかなちゃんの赤い唇が可愛く動いているんだ。 誰の目にも止まらない場所だし、ムラムラするし、かなちゃんは可愛くて可愛くて可愛いし……。 キスがしたいんです!!! 「ダメ……だよな、やっぱり。こんな事で自分のことを確認しようとするなんて、俺ってばダメな奴だよな」 大型犬が耳を垂れ下げしょげているように、ちょっと肩を落としてみたりして。 「啓太……。うん、いいよ。それで啓太が自分自身に納得するのなら、俺は手伝ってもいい」 「え、マジで?」 かなちゃんはこくりと頷いた。 よっっっっっしゃーーーーーーーーー!!! 取り敢えず言ってみるもんだな!!! 俺を見詰めてそう言うかなちゃんの頬が少し赤い。 恥ずかしいのかな?無理させちゃったかな? でも、俺はキスするんだ。かなちゃんと、今ここで! 俺はこのキスでかなちゃんを目覚めさせる!!俺に……!! 「じゃ、じゃあ、今していい?」 「うん」 肩を並べて座っていた俺もかなちゃんも、膝上の弁当箱を地面の上に一旦置いて、お互いの顔を見詰めあった。 「かなちゃん、こんなことに付き合わせてごめんね、ちゃんと俺責任取るから」 「啓太……責任だなんて大袈裟。俺は……啓太が心配なだけだよ。でもなんかこんなところで恥ずかしいね。外で啓太とキスなんて……」 「かなちゃん」 胸が少しちくんとした。 かなちゃんはやっぱり俺を弟として心配していると言った。 いやいや、胸をちくんとさせてる場合じゃない! このキスでかなちゃんの心も股間もきゅんとさせてやりたいんだ、俺は!!! 俺は体を少し捻ってかなちゃんを抱き寄せた。 すん……と鼻に流れ込んでくる、かなちゃんの汗の匂い。 どういうわけか甘い匂いに感じてしまう。可愛い、綺麗な匂いだ。 「かなちゃん」 「ん?」 「かなちゃんはキスする時、目を開けてするの?」 「あ、つ、瞑る」 かなちゃんの頬にさっと赤みが差す。 かなちゃんは瞼を閉じた。密度の濃いまつ毛が微かにぷるぷる揺れている。 可愛い……。 キスだけで済ませることは出来るのか、俺のジュニアと要相談だ。

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